こんなツイートを見た.
論理学を勉強しようとして,論理哲学論考とかいう怪文書 (失礼) を手に取っちゃうの,ほんとうにかわいそう.
— Masaki Haga (@silasolla) 2023年3月9日
『論理哲学論考』は哲学書として大事な本らしいが,「論理」を勉強したい人間が最初に手を出してよい本でないことは間違いない.こういうことを防ぐためにも次のような記事の更新をたびたびしてきた.
sokrates7chaos.hatenablog.com
しかし,この記事は単に論理学およびその周辺領域の本を並べてコメントしているだけなので,上記の事態を防げていないような疑惑が常々あった.「論理」の「何を勉強すればよいか」がわからんから「とりあえず,有名な本を手に取ればいいだろう」という発想をし,結果上記のツイートのような事態になるわけだが,「何を勉強すればよいか」について『論理学およびその周辺領域の本(旧アドレス) - Sokratesさんの備忘録ないし雑記帳』は何も語っていない.そのうえ,語らせる予定もない.
そういうわけで,「『論理』に興味を持ったが何を勉強すればよいのか,どんな本を読めばよいのかわからない」という青少年のために「こういうの勉強するといいんじゃないですかね」と提案するための記事である.役に立たなかったらごめんね.
- 君は「論理」の何に興味があるのか
- 推理小説などで「論理」を強調されてあこがれたから
- ビジネスの場で「論理」的に考えて「論理」的に話すことを周りから求められたから
- 科学における「推論」の扱いが気になったから
- 数学をしていて,「この基盤にあると思われる『論理』とはなんだろう」となったから
- 情報科学の技術的な道具として「論理」が必要になったから
- 哲学の道具として「論理」が必要になったから
- 言語学の道具として「論理」が必要になったから(2023/11/17 追記)
- 上記以外の動機の場合
- 総括
- 関連するインターネットコンテンツ
君は「論理」の何に興味があるのか
「論理」に興味を一口に言っても,興味の持ち方は様々だと思われる.これは「論理」というのがかなり広い範囲において用いられていることによるのであろう.「論理」は諸学問の「暗黙の前提」であり,人々が「合理的に」判断を下すための手段であり,人を説得するための主要な手段の一つである.
さて,このように広い「論理」をまず勉強しようと思うにあたっては,その動機や経緯と合致した入門書を読むのが良いと思われる.興味を持つ経緯にも,さまざまな経緯があると思われるが,代表的なところとしては次のいずれかだろうか:
- 推理小説などで「論理」を強調されてあこがれたから
- ビジネスの場で「論理」的に考えて「論理」的に話すことを周りから求められたから
- 科学における「推論」の扱いが気になったから
- 数学をしていて,「この基盤にあると思われる『論理』とはなんだろう」となったから
- 情報科学の技術的な道具として「論理」が必要になったから
- 哲学の道具として「論理」が必要になったから
- 言語学の道具として「論理」が必要になったから(2023/11/17 追記)
この記事ではこれらの各動機に対して,適切そうな論理学の分野やその関連分野についての私見を述べた後に「この本を読むと良いのではないか」とおすすめをする形を取ることにする.一部「実は興味があるのは『論理』ではない」という結論になった人用の本も貼るので,「論理学」の教科書紹介ではないことに注意してほしい.そういうのを知りたいなら,論理学およびその周辺領域の本(旧アドレス) - Sokratesさんの備忘録ないし雑記帳 へ行ってくれ.
推理小説などで「論理」を強調されてあこがれたから
推理小説ないし推理漫画などで「美しい論理」とか「穴のない推理」とか「論理」が重要視されることは多い*1.「推理小説の開祖エドガー・アラン・ポーは推理小説読者を生んだだけに過ぎない」というのは誰の弁かは忘れたが,推理小説に限らず古来より「謎解き」が扱いの大小はあれど話題となるような冒険譚は多い.フィクションの中でも古代から人々は「論理」「推論」というものに慣れ親しんできたのだ.
で,こういうことから「論理」に興味を持つタイプの人(というか私)は次のような点に興味を持っていると推測される.
- 「論理」とは学術的にはどういうものなのか
- (実は「論理」というよりも)推理小説を書いてみたいが説得力のある「推理」というものをどう書けばよいかわからない(ので手がかりとして「論理」を知りたい)
「友よ,それは初歩的なことだよ(It's elementary, my dear)」などと実生活でほざいてみたい*2
一つ残念なお知らせとして, 2 の動機の人が「論理学」を勉強したところで,説得力のある「推理」が書けるようにはならないと思われる.結局,それは「説得力のある舞台」「説得力のあるキャラクター」「説得力のある事件」などを生み出せなかったことの裏返しでしかないと思われるので.......この場合はもう(推理)小説の書き方指南本を読んだ方が良かろうと思われる.
1 のタイプの人は「論理」の中でも「クリティカルリーズニング(非形式論理)」に興味があると推測されるので,それにかかわる本を読むと良さそうである.問題は日本で出版されている「クリティカルリーズニング」や「クリティカルシンキング」と名前の付いている本は学術的に粗悪なものが多いので,選ぶ際は慎重にならないといけないことである.「わかりやすそう」に見えても文字が大きめだったりイラストが異常に多かったりする本(いわゆるポップ本)は避けた方が良い.
最初にどの本を読むべきか
そんなわけで前節の 1 にあてはまる人におススメする本は次の本である:
最近発売された「非形式論理学」の入門書である.分厚いがかなり平易な文章で書かれているので,すらすら読める(はず).前節の 2 にあてはまる人も読んで良いが,小説をよくするというより,小説の題材になる背景知識を手に入れるという観点から読んだ方が良いと思う.2 の方についてだが,小説の書き方指南本については詳しくないので,とりあえず目についた次の本を紹介しておく:
いい本なのかどうかは正直わかんない.仮にここでいい小説の書き方指南本を紹介できる能力があるならこんな記事書いてないと思うよ.ビジネスの場で「論理」的に考えて「論理」的に話すことを周りから求められたから
ビジネスマンはなぜか「論理的に話す」ことにやたらと固執している.しかし,よくよく聞いていると彼らは詭弁と論証の区別がついていないのではないかと思う時も多い.変な数字のごまかしをよくするし,「モデル」と現実を混同するし,「それは推論を支持する根拠としては弱い」が通じないことよくあるし.思うにビジネスマンが「論理的に話す」ことを求められているとき,本当に求められているのは「論理的な話し方」ではなく「説得力ある話し方」ではないのか.この場合,求められているのは「論理」ではなく「弁論術」や「プレゼンテーション能力」ではないかと思われる.まぁ,仮にこのわたしの考えが正しいとすると,この時点で指摘してきた相手の言語能力もたかが知れていることが示唆されるのでアレだが.......
「『論理』的に考えて」と言った場合もかなり難しい.多くの場合求められているのは「論理的に考える」ということではなく「上司のご機嫌をうかがえ」「空気を読め」「俺様の考えに従え」くらいの意味だろう.ビジネスの人間が「論理的」と言っているとき「論理的」だったことないもんな.お前のそれは「過剰に現場()に適応してしまった汎用性のないわりに時代の変化によって役に立たなくなっている思考」です.
一兆歩譲歩して,本当にビジネスで「論理的に」考えることが求められるとすると「統計を使う*3」くらいだと思われるので,統計学でも勉強したらどうか.
最初にどの本を読むべきか
とりあえず,どうしても「論理」についての本を読むなら次の二冊でどうか:
ビジネスのことを考える時間を減らしてまで読む価値があると思うかはあなた次第.「弁論術が求められていたのか」と気が付いた人にはとりあえずこれを:
こういうの読んでもビジネスの人には役に立てられない気もする.汎用性の高い話を個別の話に適応させる自信がないのならなおさら.空気を読む能力とか,現場への過剰適応の仕方は知らんので,アンガーマネジメントの本とかでええか?:
統計学の本もよく知らんので知っている教科書を紹介しておこう:
ビジネスでは巧妙な嘘をつくことを評価するらしいし,また,「それっぽい見た目の資料を用意して顧客をだますこと」が重要らしいので,特に最後の本は役に立つことだろう.実際,インチキグラフ作成のことを近年では「ビジネス数学」と呼ぶようである[ビジネス数学騒動について思うこと - Sokratesさんの備忘録ないし雑記帳].そういう点で(2023/12/26 追記)もしかしたら,『誤謬論入門 優れた議論の実践ガイド』も役に立つかもしれない.この本は最近存在を知った.(追記終わり)
科学における「推論」の扱いが気になったから
科学における「推論」の扱いに気になった場合,もしかすると,あなたが知りたいのは「科学という営みは全体としてどうとらえるべきなのか」や「『科学的』とはどういうことなのか」という点が気になっているのかもしれない.この場合,本当にあなたが学ぶべきは「科学哲学」という分野である.
ただ,注意してほしい点として「科学哲学」を学んだところで最初の「科学という営みは全体としてどうとらえるべきなのか」や「『科学的』とはどういうことなのか」という疑問にすぐさま答えを得られるわけではない.わかるのは「どういう点についてまでは(ある程度の)コンセンサスが得られているのか」,「どこに問題点があるとされているのか」「それについて諸派の意見はどうなっており,どのような意見の応酬が行われているのか」ということだけである.なぜだか「哲学を学ぶと真理がハッキリわかる!」と夢を見ていたり「哲学は真理を振りかざすもの」というよくわからん思い込みをしている人々も多い*5が,哲学も学問の一つである以上,常に何らかの「問題(イシュー)」を抱えており,それを解決するために議論が行われている.
この点を念頭に置いて,「はっきり答えが出ないならなぜ学ぶ必要があるのか」という疑問が出てくるかもしれない.一番大きいのは「考えをまとめるための語彙」や「議論のお作法」が得られることだとわたしは思う.諸派の意見に納得がいかないにしろ「どこに納得がいかないのか」をしっかり言葉にしないと「議論」は進まない.その議論のための「語彙」や「お作法」を手に入れるのである.
また,諸派の弱点を知ることによって「どこに問題の中心的な課題があるのか」がはっきりとわかるようになってくる.言ってしまえば,「科学哲学」を学ぶというのは「科学という営みは全体としてどうとらえるべきなのか」や「『科学的』とはどういうことなのか」という疑問の「先行研究」を学ぶという行為である.わざわざ専門外で「先行研究を踏まえない戯言」を生産する愚を犯す必要もなかろう.
さて,ここまで読んで「いやいや,自分が興味のあるのは『科学哲学』ではなくて,科学で使われる帰納的推論?アブダクション?リトロダクション?とかいうやつの概略なんです」ということならば,これは本当に「論理」に興味がある人である.こういう人には,「帰納的推論」や「アブダクション(リトロダクション)」について書かれた「論理学」の本を紹介することにする.
最初にどの本を読むべきか
そういうわけで,「実は科学哲学に興味がありました」という人には次の二冊の本を入門書として薦める:
- 疑似科学と科学の哲学
- Philosophy of Science: Very Short Introduction (Very Short Introductions) (English Edition)
(2023/11/08 追記)『Philosophy of Science: Very Short Introduction (Very Short Introductions) (English Edition)』に日本語訳があることをコメント欄で教えてもらった. (追記終わり)
「帰納的推論」や「アブダクション(リトロダクション)」について書かれた「論理学」の本で私がちゃんと読んだことがあり勧められる本は次である:
「定義をする」という行為についても詳しく載っているという点でも強く勧められる.どうも「規約的定義」こそが「定義」と思い込んでいる人が(自然)科学や数学関係者に多いが,それ以外の「定義」もあることを知っておいた方が良いと思う.数学をしていて,「この基盤にあると思われる『論理』とはなんだろう」となったから
数学をしていて,「この基盤にあると思われる『論理』とはなんだろう」となった人にはたぶん大きく3種類いる.
- 数学の基礎的な言葉遣いにある程度まとまった本が欲しい
- 「数学の基礎」とは何か,という問題に興味がある
- 「数学」で使われる「論理」を何らかの方法で分析したい
1 の興味の人については,「集合・論理」などについてまとめて書かれた入門書が求めているものであろうと思われる.そういう本はたくさん出ているがどれがいいのかはいまいちよくわからないし,必要に感じたことがあまりないので,そういう意味でもよくわからない.ので,定評のある本をあげることにする.
2 の興味の人については,ちょっと大変である.「数学の基礎」を扱う領域はわたしの知る限り「数学の哲学*7」と「数理論理学(数学基礎論)」に分けられる.前者は「哲学」の領域であり,後者は「数学」の領域である.この二つはかなり隣接している分野なのだが,少なくとも後者の学習には前者は必ずしも必要ではない.実際,数理論理学を専門にしている人が「数学の哲学」に詳しくないことはよくある*8.が,少なくとも「数学の基礎」に興味があるのであれば,両方ある程度理解しておいた方が良いというのが,わたしの意見である.そのため,2 の興味の人には数学の哲学の本と数理論理学の本を勧めることになる.
3 の興味の人は「数理論理学」という領域に興味のある人だと考えられる.「数理論理学」は「数学的対象(構造)を記述する(意味として持つ)人工言語と実際の数学の間の関係」について研究する分野である.この分野を勉強する際に注意しなければならないことの一つは「人工言語の文字の並び(シンタックス)」と「人工言語の意味すること(セマンティクス)」の区別をつける必要があることである.特に,算術が絡んで「コーディング」をするようになると,このあたりの区別が本当に難しくなる(正直,多少慣れているはずの自分でも混乱する瞬間がある).その上,この区別は他の数学領域ではほとんど行わないことなので,慣れるのが大変だと思うが,ここを乗り越えないと何もできない分野であることは間違いない.
あまり他の人が言わない数理論理学を学ぶ上の注意点として「普段の数学は ZFC のような何らかの特定の『集合論』の上で展開されているのではなく,自然言語の上で展開されている」ということを意識することである.なぜだか,「"ZFC" の上に数学全体がのっかっている」かのような言説が流行っている*9が,「そう考えると変だな.自然言語の上で数学を俺たちはやっている」ということを理解しないといつまでも何をやっているのかわからない分野だと思う.実際,ZFC(のモデル)の元はすべて「集合」であるにも関わらず,「数学を記述する人工言語」の「記号」はどこからともなくやってくる上に(普通に考えると)集合とは考えられない*10.
最初にどの本を読むべきか
1 の人向けの本として次の二冊をあげる:
本屋でぱらっとめくってみて良さそうな方を選べば良いのではないか.2 の人向けに勧める「数学の哲学」の本として次をあげる:
アメリカの標準的な「数学の哲学」の教科書らしい.(2023/11/27 追記)ちなみに,この本で「述語的(predicative)」「非述語的(impredicative)」と呼ばれている用語は,普通は「可述的」「非可述的」が定訳だと思う.なぜ,このような非標準的な訳をしたのかはよくわからない.(追記終わり)
(2024/03/01 追記)残念ながら,現在,この本の邦訳版は版元品切れ重版未定(社内絶版)という状態のようだ.読みたければ,原書を読むしかない.(追記終わり)
2, 3 の人に勧める「数理論理学」の本は次の3冊である:
これも読みやすそうなものを選んで読めばよいと思う.他の(若干贅沢な)読み方として,三冊ともそろえ,どれか一冊通読する本を選び,よくわからないところを他の本を参照しつつ読むという読み方もある.(2023/11/27 追記)
数理論理学の教科書として,以下をあげ忘れた.この本は欧米だと標準的な教科書としてあげられるらしい. (追記終わり)
情報科学の技術的な道具として「論理」が必要になったから
情報科学の技術的な道具として「論理」が必要になるとすると,たぶん,「計算論」か「形式検証」の文脈だと思う.ここで言う「論理」は他の節の「論理」と微妙にニュアンスが違う.ここでいう「論理」は「形式的な論理」である.つまり,「(何らかの)人工的な言語で記述された文やそれに対する記号操作」を指している.こういう場合,扱う論理体系がある程度定まっているケースが多いと思われるので,そういう論理体系を扱っている論文や本を読んだ方が良いと思う.が,せっかくなので,それらを読む上で基礎になりそうな本をあげておく.
最初にどの本を読むべきか
情報科学の技術的な道具として「論理」が必要になった人は次を読んでおくと参考になると考えられる:
哲学の道具として「論理」が必要になったから
哲学の道具として「論理」が必要になった人がこの記事を読むとは思えないのだが,一応.
哲学周りで「論理」と名前の付く(ある程度大きな)分野で混同されやすいのは「哲学的論理学(Philosophical Logic)」と「論理学の哲学(Philosophy of Logic)」の二つであろう.前者は「哲学的な課題としての論理の問題を解く論理学の分野」で,後者は「論理学にまつわる哲学的な問題を考える哲学の分野」である.若干ややこしいが,区別してほしい*11.
端的に言ってこれらの領域について,わたしはほとんど知らないので,よくこの辺の領域の人が薦めることの多い本をあげるにとどめておく.
最初にどの本を読むべきか
哲学系の論理学に近い分野の人がよく教科書としてあげている印象があるのは次の3冊である:
- 論理学 (3STEPシリーズ)
- Logic for Philosophy (English Edition)
- Introduction to Formal Logic With Philosophical Applications
(2023/11/17 追記)
『論理学 (3STEPシリーズ)』には著者自身による解説動画として見ることのできる動画が存在する.
youtu.be
また,哲学よりの人間 T 氏から「『論理学 (3STEPシリーズ)』より先に『論理学をつくる』を読ませたほうがいいのでは?」とのことである.あいにく,手元にないし,またちゃんと読んだことのない本だが,定評のある本ではあるので,読んで損がないことは確かである.
(2023/11/28 追記)
哲学よりの人間 T 氏から追加で紹介してもらった哲学科向けの論理学の教科書類. (追記終わり)
論理学の哲学はあまり本も知らないが次の本を入門書としてあげられているのを見たことがある:
(2023/11/08 追記)この本に日本語訳があることをコメント欄で教えてもらった.ただ,版元品切れのようで Amazon などでは定価で販売していない. (追記終わり)その他,論理学の哲学の入門書らしき本として次がある:
- An Introduction to the Philosophy of Logic (Cambridge Introductions to Philosophy) (English Edition)
(2023/11/27 追記)
『増補改訂版 言語哲学大全I: 論理と言語のフレーゲの章までを読んだほうが,モチベーションを理解するのためには良いのではないか』という主旨のコメントを寄せられたので,紹介する.論理学の本ではなく,言語哲学の本であるし,ちゃんと理解できたことのない本なので紹介するにとどめておく.
(追記終わり)
(2023/11/28 追記)
後日届いた哲学系の人 T 氏からのコメント:『哲学科学生向けの論理学ルートを真面目に考えるとすると、「金子本(記号論理入門 (哲学教科書シリーズ))→戸田山本(論理学をつくる)→大西本(論理学 (3STEPシリーズ))→テッドサイダー(Logic for Philosophy (English Edition))」になるかなぁ』
(追記終わり)
言語学の道具として「論理」が必要になったから(2023/11/17 追記)
言語学の道具として「論理」が必要になった人がこの記事を(以下略).
「追記」と書いてあることからもわかるように,これを書いている人が最初思いついていなかった方向からの興味.言語学への応用例をいくつか見たことあるのになんで思いつかなかったんですかね.
残念なことに言語学周りは哲学以上によくわからないので,Twitter で意見を募った.
情報求ム
— そくらてす (@7danmoroboshi) 2023年11月17日
言語学系デ有名ナ論理学ノ教科書
すると次のような返信が帰ってきた.
https://x.com/nu_eiji/status/1725464344568455294?s=20
(2024/3/18 追記)
元ツイの人がツイ消してしまったようで,紹介している本が不明になってしまったことに今さら気がついた.紹介されていたのは次の三冊.
- Logic, Language, and Meaning, Volume 1: Introduction to Logic (English Edition)
- Logic, Language, and Meaning, Volume 2: Intensional Logic and Logical Grammar (English Edition)
- Everything that Linguists have Always Wanted to Know about Logic . . . But Were Ashamed to Ask
(追記終わり)
定評などはよくわからないが,ともかくこの辺りが,言語学周りの人の読んでいる「論理」の本らしい.
最初にどの本を読むべきか
上記のような経緯で得た「言語学周りの人の読んでいるらしき本」からチョイスするなら,サンプルなどを見る限り次だろうか:
正直,この辺りは勉強不足で申し訳ないのだが,言語学で「論理」を使っている人が身近にいるのであれば,そちらに聞いた方がこの記事よりまともな情報を得られると思う.あんまり力になれなくてごめんね.
上記以外の動機の場合
今までこの記事で紹介してきた動機以外で「論理」に興味を持つという事態がわたしの人生経験では想像ができない.とりあえず,何も前提条件なしで,薦めるならどの本にするかということで本を考えてみることにした.
最初にどの本を読むべきか
何も前提条件なしで,薦めるなら次の本のいずれかである:
かんどころシリーズの一冊.これだけでは足りないが,「入門前の入門書」としてはピッタリだと思う. 一応,一般書ということになっている.『不完全性定理』に以降の「論理」についていくつかのトピックの概略が詳しい.「非形式論理」の教科書だが,「論理」とは何かを知るには一番適切な本に思える.
総括
テキトーに答えたように見える箇所もあるかもしれないが,ある程度まじめに考えた結果をここに書いている.
こういうアドバイス系の記事はわたし自身の趣味,人生経験,価値観やそれによる考えに依拠している部分が大きいので,必ず「論理」に興味を持った人の役に立つと思ってはいない.「ここには書いてないがこういう経緯で興味を持っている.アドバイスがほしい」ということがあればコメントなどとして寄せてもらえると答えられるかもしれない(答えられるとは限らないが).
少なくとも読んだ人の何らかの参考になれば幸いである.
関連するインターネットコンテンツ
この記事と似たような目的のページやこの記事の想定読者が参考になると思われるページをあげる.
似たような目的のページ
- Nishimura Yuki's website
- 西村祐輝氏の手による「数理論理学を初めて学ぶ人へのブックガイド」である.数理論理学を学びたい人の参考になると思われる.
- 大西 琢朗 (Takuro Onishi) - 研究ブログ - researchmap
- 京都大学の大西琢朗先生の手による『論理学入門・文献案内』.哲学系の人はこちらの方が役に立つと考えられる.(2023/12/03 追記)
参考になるかもしれないページ
- 書評(数理論理学)
- 奈良女子大学の鴨浩靖先生による数理論理学の本の書評のリスト.あくまでも書評なのでこの記事とは少し目的が違うが,やはり,数理論理学を学びたい人の参考になると思われる.
- 論理学およびその周辺領域の本 - Sokratesさんの備忘録ないし雑記帳
- 手前味噌で申し訳ない.論理学のブックリストを作っているよ.この記事で書いたよりも詳しく内容に触れている本もあるよ.
- 【論理学は役に立つ】人文系の大学新入生へ─論理学のすすめ─(あと科目登録で迷ってる人にも) - 曇りなき眼で見定めブログ
- 盲点って人が書いた「論理学」の紹介記事.だいたいあってはいるんだが,「非形式論理学」の話がすっぽり抜けているのが少し残念.クリティカルシンキング*12に言及しているので,それでよいつもりなのかもしれないが,(2024/3/22 削除)
非形式論理学は誤謬の構造の分析なども行うので,やはり説明としては不十分かなと.(削除終わり)(2024/3/22 追記)非形式論理学は誤謬の構造の分析などをする際に,「形式化してしまうと見えなくなってしまう」部分(自然言語での議論特有の現象)などに対しての考察も行うことが書かれていない.その辺りを解説しないとやはり説明としては不十分かなと.そうでないと,「形式論理」で全部いいじゃんとなってしまうし.(追記終わり)まぁ,「非形式論理学」自体が良くも悪くも日本でそこまでメジャーではないので,この記事の内容のイメージがそこまで的外れとも言えないかなとも思う.
- 盲点って人が書いた「論理学」の紹介記事.だいたいあってはいるんだが,「非形式論理学」の話がすっぽり抜けているのが少し残念.クリティカルシンキング*12に言及しているので,それでよいつもりなのかもしれないが,(2024/3/22 削除)
- 「web上で読める哲学系ブックリスト」のリスト - 川瀬和也 研究ブログ
- 「論理学」に興味があると思いきや,実は「科学哲学」に興味があった場合のためにこのリンクを貼っておく.
- Philosophy of Science Books in Japanese
- こちらの伊勢田哲治先生のブックガイド,科学哲学を勉強する上で大変に参考になる.(2023/11/25 修正)
(2023/11/20 修正)この記事を書いた時点では https 通信に対応していなかったが,ついに対応したらしい.Twitter で https 通信にこのページが対応していないことを愚痴っていたらのだが,残念ながらリンク切れを起こしている.......https 通信に中途半端に対応していないらしく, G○○gle Chr○me などの http → https と勝手に変換するブラウザを使っていると見れない.その場合, https を http に手動で直せば見れる.(修正終わり)
といきなり来たので正直びっくりした.つぶやいてみるもんだなぁ.(修正終わり)設定を変更してみたのでご確認ください。
— 伊勢田哲治 (@tiseda) 2023年11月25日
- こちらの伊勢田哲治先生のブックガイド,科学哲学を勉強する上で大変に参考になる.(2023/11/25 修正)
*1:個人的には「美しい論理」などと表現されると気持ちが悪い.「論理」というものがよくわからなくて研究をしている身としては「美しい」などと「論理」に価値判断を下されることに一抹の気持ち悪さがある.せめて「美しい推論の列」とかにならない?あ,ごめん.やっぱ気持ち悪い.......
*2:言いたい!すげぇ言いたい!
*3:正確には「それっぽい見た目の資料を用意して顧客をだますこと」のような気もする.
*4:こちらの『統計学入門』は賛否両論あるらしいが,いまいち何が問題になっているのかよくわからない.とりあえず,定評もある教科書だし,読んで損になるとも思えないので勧めておく.
*5:少なくとも「反証可能性こそが『科学』の条件」みたいな何度も批判されてきたうえに,「ちょっとそれだけではいろいろキツイないにゃんねぇ」という考えを妄信しているかわいそうな生き物たちを生み出すような教育をしてきた人々は反省してほしい.なぜ,反駁も並べて紹介しないのか.
*6:科学と疑似科学を「線引き」するものは何か,という問題.「科学」の「定義」とは何かを問う問題である.
*7:もしかしたら,ふざけているように見えるかもしれないが,これが正式名称の分野である.一般に「○○の哲学」(○○は学術分野の名前)とは,○○という分野に関わる哲学のイシューを研究する分野である.「個別科学の哲学」と総称されることが多いが,○○に普通「科学」として扱われない分野も入ることを鑑みると「個別学問領域の哲学」などと呼んだ方が良いように思う.
*8:逆は知らない.逆も成り立つようなことはたまに聞く.
*9:たぶん,「現代数学の議論のほとんどを ZFC の中で『コーディング』を介してシミュレーションできる」というのを誤って受け取られた結果だと思う.仮に ZFC の上で数学者が数学を行っているなら,\({x}\in {4}\) や \({2}\cap {3}\) という式を奇妙に感じることはないはずである.
*10:ZFC への「コーディング」を介せば「集合」とみなせるが,そういうのはいったん置いておく.
*11:(2023/12/07 追記)"An Introduction to the Philosophy of Logic (Cambridge Introductions to Philosophy) (English Edition)"の冒頭の記述を参考にここの記述は書いている.が,そうではない区別をする立場もあるらしい.『論理学の驚き』の冒頭では,「哲学のための論理学 Logic for philosophy」,「論理学の哲学 Philosophy of Logic」および「哲学的論理学 Philosophical Logic」の三つの領域があるとしている.わたしのつたない理解では「本文中の哲学的論理学」が「哲学のための論理学」と呼ばれており,「本文中の論理学の哲学」が「論理学の哲学 Philosophy of Logic」および「哲学的論理学 Philosophical Logic」に分割されているように見える.いまいちこの理解で正しいのかも自信がない上にこの文脈での「論理学の哲学 Philosophy of Logic」および「哲学的論理学 Philosophical Logic」の違いがわからない.ともかく,この件については違う流儀の言葉遣いを相手がしている場合もあるので,話がかみ合っていないと思ったら相手に定義を確認してみよう.(追記終わり)
*12:(2024/3/22 追記)非形式論理学とほぼ同義に用いられることがある.(追記終わり)