Sokratesさんの備忘録ないし雑記帳

書きたいことを書いている.駄文注意.

論理学およびその周辺領域の本

論理学とその周辺領域の本を並べてみた*1.この記事にあげる本は,何らかの形でわたし自身が手に取ったことのあるもの(読んだとは言っていない)に限定している*2.ただし,原語版は手に取ったことがあるが,日本語訳はそうではない,またはその逆という場合はある.

すべての本に対してコメントをしきれていないので,周りからサボりを指摘されやすいように,公開しながら作業することにする.暫定でもコメントの終わった本には⛄をつけることにする(2022/08/07 追記).

(2023/11/29 追記)本をいくつか増やしたが,いまいちいつ増やしたのか記憶にないものも多いので,そのあたりの細かい管理はあきらめた.せめて,今後,本に対するコメントを追記する場合は日付を明示する努力をする.(追記終わり)

(2023/12/03 追記)「論理」に興味があるが「論理学」に興味があるか自信のない場合は次の記事に目を通すと参考になるかもしれないし,ならないかもしれない.
sokrates7chaos.hatenablog.com(追記終わり)

一般書

この節では論理学の一般書を紹介する.
推論や根拠ある論証について扱う学問領域を論理学と言う.

かんどころシリーズのひとつ.このシリーズのコンセプトとして「入門書の入門」みたいなものを作りたいというものがあるらしい.まさにそんな感じの本である.
「これだけでは何かをやるには圧倒的に足りない.でも何を勉強したらよいかの道しるべにはなる」というのがざっと目を通した感想.詳しいことは他書に譲りまくっているので,この本だけ読んでもわからないことは多いと考えられる.漠然と「数理論理学」がやりたいと思う人が道しるべに読んで「ここを深く知りたい!」となった話題を参考文献で詳しくやるという使い方が最適解ではないか.

数学基礎論界隈のレジェンド竹内先生の集合論の入門書.最初の方は初学者にもわかりやすく丁寧に書いてくれている.が,最終章周辺は明らかにテンションの上がった竹内先生の高度な思考が垂れ流されているので,その辺りの話題を初学者は理解しようと思って読んではいけない.この章については完全にタイトル詐欺である.第4章まで読んで集合論に興味を持ったら, 集合論の入門書のどれかを一冊読んだほうが良い.
(2024/04/26 追記)この本の哲学的な話題(特に形式主義,直観主義,論理主義)についての記述はほんの少しピントがずれていたり,(執筆年代を考えればやむを得ないのだが)ネオ論理主義のリバイバルの話が載っていないなど少し問題があるので,あまり鵜呑みにしない方が良い.(追記終わり)

一般書のくくりにしたが,明らかに一般書の範疇を超えた内容を扱っている.どの層を想定して書いたのかよくわからない.ただし,この本をきっかけにコンピュータサイエンスの数学を始めた人間を何人か知っている.

ゲーデルの不完全性定理の誤用についてまとめた本.読んでいておもしろかった記憶があるが,最後に読んだのがだいぶ前なので,何が書いてあったのか全然覚えていない.

論理学と言うか,「論理を巡る哲学の問題への入門」という感じの本.「論理学の哲学」の入門書として紹介されることもある.言語哲学の古典的な話題である「確定記述」の問題なども出てくる.
日本語訳が存在するが,版元品切れなのか絶版なのか,定価では買えないようだ→論理学超入門 (岩波科学ライブラリー 284)

この本自体は論理学の本ではないのだが,第I部が非形式論理学,特に誤謬論の良い入門になっている.ただし,第II部以降は論理学はあまり関係ない上に,個人的な印象として「あれ?第I部で注意してた誤謬臭い言い回ししてない?」となることがある.おそらく,執筆者が切り替わったためだろう.この本の第I部を読み終わって,誤謬論に興味を持ったら,非形式論理学の節から良さそうな本を一冊選んで読むのが良いと思う.(2024/04/26)

非形式論理学

この節では非形式論理学の本を紹介する.
現在,日本で単に「論理学」と言った場合,論理関係を形式化(記号化)して考察する「形式論理学」を指す事が多い.しかし,形式化(記号化)せずに論理関係,帰納的論証や論理的誤謬などを考察する分野も存在する.このような領域を非形式論理学という.クリティカル・シンキングと呼ばれることもあるようである*3.「非形式」論理学とは言っているものの論理学である以上,推論の形式について考察することになる.
非形式論理学においては,形式論理学ではなかなか扱わない「帰納的推論」も取り上げられる.一般に科学における推論に興味のある方は非形式論理学を学んだほうが得るものは多いかもしれない.

最近出版された非形式論理学の和書.帰納的推論に対する記述が豊富である.
非形式論理学に馴染みのないわたしにも読みやすく一ヶ月位で読めてしまった.ただし,一部演習問題で「あれ?」と思った箇所もあった*4.著者の独自用語などは断ってから使ってくれているので,おそらく誠実な方と考えられる.
推論に関わるためか,最後の節は統計の話をしている.だが,記述統計学の域は出ておらず,推計学や因果推論などの話はおまけ程度にしか出てこない.続刊が予定されいているそうなので,続刊で扱ってくれることを願っている*5

非形式論理学の教科書として定評があるようだ.

帰納的推論・アブダクション

この節では主に演繹以外の推論を主なテーマとする本を紹介する.
演繹以外の推論をすべて「帰納的推論」とまとめる立場と,(先の意味での)帰納的推論のうち「アブダクション」は他の推論方法と違うとして区別して,推論方法は「演繹・帰納・アブダクション」の三種類であるとする立場(三分法)がある.この記事においては三分法の立場を取ることにする.

アブダクションとはアメリカの哲学者 Charles Sanders Peirce によって考案(発見?)された推論方法である.「最良な説明への推論」と呼ばれることもある.
この本は Peirce 研究で有名な米盛裕二氏によるアブダクションの解説書である.

数理論理学・数学基礎論

この節では数理論理学・数学基礎論の入門書を紹介する.
数理論理学とは,数学を使って形式化・記号化された論理・計算およびそれらと数学的構造との関係を調べる学問領域である.
数学基礎論の指す領域についてはいまいち曖昧なところがある.数学基礎論を数理論理学の異名として扱う人々もいる(実際,以下に紹介する本のいくつかはそのようなスタンスである)が,ここでは意味を広く取り,「数学基礎論とは数理論理学を含む数学の『基礎』について扱う学問領域」と扱うことにする.
いずれにせよ,数理論理学・数学基礎論の入門書は内容がかぶっていることも多いので,この節でまとめて扱うことにする.

わたしが最初に手に取った思い出深い数理論理学の本.自然演繹の完全性定理と一階述語論理のカット除去可能定理はこの本で最初に勉強した.
今読み返すと完全性定理の証明をするのに Henkin Theory を作っていないなど独特なところがある.

数理論理学

数理論理学

Amazon

和書では1階述語論理の形式体系周りの話題が最も豊富な本.さまざまな形式証明体系に興味がある場合,この本が入門に良さそう.

薄い割に内容が濃いという評判の本.実際最初に読む本としては少し重たいかもしれない.数学的な部分については厳密に書かれている.
著者の林先生のサイトはこちら→林晋のサイト 八杉晋のサイト

数学基礎論の辞書.

数学基礎論の入門書.公理的集合論の入門書で有名な Kunen が著者.豚がハブられている ZFC の宇宙の絵が好き.
原書はこちら→ The Foundations of Mathematics (Studies in Logic: Mathematical Logic and Foundations)
原書に出てくる次のあまりにも強い主張が好き:

  • All abstract mathematical concepts are set-theoretic.
  • All concrete mathematical objects are specific sets.

強い主張だが,だいたいあっている.

アメリカの標準的なLogicの教科書らしい.理屈はわからないが Kindle 版と日本語訳は原書の半分近くの値段になっている.
原書はこちら→ A Mathematical Introduction to Logic (English Edition)

[asin:B07CSYLLG3:detail]

古い本.現在この本を読むくらいなら上の Enderton の本などを読んだほうが良いと思う.

算術

この節では算術にフォーカスを当てている本を紹介する.

数学基礎論の教科書.不完全性定理などの算術についての話題と(二階算術の)逆数学についてとても詳しい.通しで読むべき本のような気がするが,わたしは辞書のように使うことが多い.

不完全性定理

この節では不完全性定理にフォーカスを当てている本を紹介する.

不完全性定理についての入門書.「(数学系のわたしが)哲学にも興味があるならこの本読んだほうが良い」と以前ある人に言われた.

逆数学

この節では逆数学にフォーカスを当てている本を紹介する.逆数学とは計算論的なノリによる定理の分類学である.

二階算術における逆数学の定評のある教科書.(2024/04/26)

非古典論理

この節では非古典論理にフォーカスを当てている本を紹介する.

和書で関連性論理についてまとめてある本はこの本くらいではないか.
この本には著者自身による解説動画として見ることのできる動画が存在する.
youtu.be

非単調論理

この節では非単調論理(Nonmonotonic Logic)についての本を扱う.通常,「証明の前提が増えたら,証明できる命題が増えることはあっても,証明できない命題が生じることはない」という「単調性」があるというのが直観的にある.実際,数学の形式化にあたるような一階述語論理においては当然成り立つ性質である.一方で,法体系のように「新しく禁止される」ことによって「(合法的に)〇〇できる」という命題が証明できなくなる(と考えられる)ような「論理」の世界も世の中には存在する.こういう「論理」やその形式化を扱う領域やその「論理」を非単調論理と呼ぶ(という説明であっているはず).

様相論理

この節では様相論理にフォーカスを当てている本を紹介する.「様相」とはざっくり言うと「文を取り巻く真偽以外の環境・状況」である.たとえば,「~するべき」という文は「義務」という様相を表している.他の「様相」の例として「必然(~は必然)/可能(~であることは可能)」「認識(~を知っている)」「信念(~を信じている)」「未来(どの未来でも~)」「過去(どの過去でも~)」「証明可能性」などがある.(2024/04/11 追記)正直ここのコメントよりNishimura Yuki's website 様相論理のブックガイドのコメントの方が正確で良いような気もする.(追記終わり)

通称「様相論理の青い本」.様相論理以外のことも書いてあるのだが,なぜか「様相論理」の入門書として薦められがちなイメージがある.そのため,分類をここにした.
実のところ,様相論理の勉強に使ったことはなく,導出原理の勉強に使った.

通称「様相論理の魔術書」(おそらく,本のデザインのため).「様相論理の黒い本」とも呼ばれる. 数学基礎論サマースクール2015の講演内容をまとめた本.
様相論理でわからないことがあるととりあえず,この本の第一章に目を通す.
様相による真理論に入門するならこの本の第4章が良いと考えられる.
(2024/03/04 追記)
良書なのだが,残念ながら版元品切れ重版未定という状態のようだ.
幸い(?)紀伊国屋書店から電子書籍版が出ている(個人的に Kindle Store などのもう少しメジャーどころから出してほしかったという気持ちはあるが,読めるだけマシというのも間違いない).
数学における証明と真理 / 菊池誠【編】/佐野勝彦ほか【著】 <電子版> - 紀伊國屋書店ウェブストア|オンライン書店|本、雑誌の通販、電子書籍ストア
(追記終わり)
(2024/05/23 追記)


とのことなので,2024年中には流通が改善される可能性が高い.
(追記終わり)

modal \(\mu\) 計算に詳しい唯一の和書.日本において modal \(\mu\) について学習するなら,まずこの本を読む必要がある時代が来るのではないか.

2015 年頃に様相論理の入門書として薦められたのだが,まだキチンと目を通していない().薦めてくれた S 先生,申し訳ない……

様相論理の辞書みたいな本.

一階様相述語論理の本.「様相論理」と単に言った場合,「様相オペレーターの入った命題論理」を指すことが多い.この本は珍しく,「様相オペレーターの入った述語論理」について書いてある.
Second edition が最近出たらしい.ページ数を見るに加筆が行われたようだが,どの程度加筆されたのかは確認していない.
(2024/1/24)

増補改訂版 言語哲学大全II: 意味と様相(上)増補改訂版 言語哲学大全Ⅲ: 意味と様相(下)

様相論理と言うより,様相についての入門書.『言語哲学大全』というシリーズ自体は全4巻だが,途中から読み始めても差し支えないとされる.最近,増補改訂版が出たので,そちらを読んだ方が良いらしい.(2024/05/13)

証明論

この節では証明論が主なテーマの本を紹介する.

数学基礎論界隈のレジェンド竹内先生の証明論の本.(2024/1/24)

証明論の基本的なことがまとまっている本.証明論の初歩をやるならこの本から入ると良いのでは.(2024/1/24)

順序数解析

この説では順序数解析についての本を紹介する.

モデル理論

この節ではモデル理論が主なテーマの本を紹介する.と言いつつ,不勉強でこの分野についてわたしはほとんど知らない.

モデル理論の定評のある教科書らしい.

公理的集合論

この節では公理的集合論が主なテーマの本を紹介する.(2024/4/25 追記)この節については (私的)数理論理学、集合論の文研紹介 の方が紹介されている文献も豊富でコメントも的確である.(追記終わり)

通称「旧版 Kunen」の日本語訳.公理的集合論における強制法(Forcing)の入門書として有名.
下の「新版 Kunen」とは内容が違うらしい.記述集合論の人に言わせると「新版 Kunen には大事な話題が増えたのでとても良いのだが,旧版にしか載っていない大事なこともある」らしい.

通称「新版 Kunen」.上の「旧版 Kunen」とは内容が違うことに注意.言語が違うとはいえ,新板も旧版も読める日本人は恵まれているのかもしれない.

タイトルは圏論の教科書として有名な Categories for the Working Mathematician (Graduate Texts in Mathematics) (邦題 圏論の基礎)のパロディか?Categories for the Working Mathematician (Graduate Texts in Mathematics) が通称 "CWM" なので,この本は "SWM" と呼ぶべきだろうか?
パラッと手に取って最初の方だけ読んだ感じは読みやすかった.

定理証明支援系・自動証明

この説では定理証明支援系・自動証明についての本を紹介する.

Boyer-Moore の自動証明器を下敷きにした J-Bob なる定理証明支援系についての本.Boyer-Moore の自動証明器は,帰納法を含む量化子なしの一階述語論理のための自動証明器で,Lisp を下敷きに実装されている. ACL2 は Boyer-Moore の自動証明器の後継の自動証明器であり,かつそれを記述する言語である.J-Bob は ACL2 と Scheme によって実装されており,読者はそのどちらかの実装を使って実際に動かしながらこの本を読むことになる.そのため,この本を読むにあたって,最低限 Lisp の CAR, CDR, CONS くらいの知識が要求される.
などといけしゃあしゃあと書いてみたが,自動証明器の研究の全体像がいまいちはっきりと私には見えていないので,この本が自動証明機の入門書として適切なのかどうかはよくわからない.ともかく,よく良書として挙げられる.
Amazon で品切れでも版元では十全にある場合が多いそうなので,この本については版元から直接手に入れたほうが良いかもしれない.https://www.lambdanote.com/products/littleprover
原書はこちら→The Little Prover (Mit Press)
ACL2 のホームページ→ACL2 Version 8.5

高階論理

この節では高階論理についての本を紹介する.

二階述語論理について詳しい.

型理論

この節では型理論についての本を紹介する.

通称 TaPL.原著者と翻訳チームが慎重にやりとりしながら翻訳をしていたことでよく知られている.その翻訳メンバーもすごい豪華.原書の細かい誤りが修正されているなど完成度も高い.
この本のサポートページ(正誤表などもこちらから)→https://tapl.proofcafe.org/
原書はこちら→Types and Programming Languages (The MIT Press)
原書のサポートページ→https://www.cis.upenn.edu/~bcpierce/tapl/

カリー・ハワード同型のほぼ唯一の入門書にしてまとまった専門書のような気がする.
ちなみに,情報系の人間が思っているほど,数学基礎論の人間はカリー・ハワード同型に興味のある人は多くない.

プログラム意味論

この節ではプログラム意味論についての本を紹介する.

プログラム言語の意味論の本でもあるが,なぜかラムダ計算の入門書としても有名.

定評のあった G. Winskel によるプログラミング言語の意味論の教科書の邦訳.訳者が豪華メンバーなあたり,かなり気合を入れて翻訳された本であることは間違いない.
原書はこちら→The Formal Semantics of Programming Languages

数学の哲学

この節では数学の哲学が主なテーマの本を紹介する.数学の哲学は数学そのものではないことに注意してほしい.また,論理学でもないが,論理学の周辺領域ではある.関心のある人間も多いと考えられるため,ここに載せておく.
〇〇学の哲学というのは〇〇学に関する哲学的課題を扱う分野である*6.あくまでも哲学の領域の話であるので,〇〇学そのものと混同しないように注意してほしい.特に「数学の哲学」は伝統的に数学そのものと勘違いされやすく,いわゆるトンデモ屋が湧きやすい.数学徒の間で「哲学的話題」がタブーになる原因の一つがそういった人間たちなので,本当に勘弁してほしい.

「数学の哲学」の定評のある教科書らしい.本の構成は
第一部:数学の哲学で扱う問題と諸派の見解の簡単な要約
第二部:論理主義,形式主義,直観主義(以上まとめてビッグスリー)以前の重要な数学の哲学に関する議論・立場の紹介(プラトン,アリストテレス,カントおよびミル)
第三部:ビッグスリーの紹介(フレーゲ,ラッセル,ネオ論理主義,ヒルベルト,カリー,ブラウアー,ハイティングおよびダメット)
第四部:ビッグスリー以後の重要な数学の哲学に関する議論・立場の紹介(自然主義,虚構主義,様相真理論,構造主義など)
となっている.各派について,その立場の考え方とその利点,欠点をそれぞれあげてくれている.ただし,ウィトゲンシュタインについてはそれほど取り上げてくれていないので,ウィトゲンシュタインに特に関心のある者は他の本を読む必要がある.
一つだけ注意してほしい点として,この本で「述語的(predicative)」「非述語的(impredicative)」と呼ばれている用語は,普通は「可述的」「非可述的」が定訳だと思う.なぜこのような非標準的な訳をしたのかはよくわからないが,他の人と話すとき,混乱を招く恐れがあるので,「可述的」「非可述的」と読み替えることを勧める.
2024/01/19 現在日本語版は版元品切れ重版未定(社内絶版)のようなので, 読みたければ原書を読むしかない.
原書はこちら→ Thinking About Mathematics: The Philosophy of Mathematics
(2024/01/19 最終更新)

イアン・ハッキングおじさんの本.原題は "Why Is There Philosophy of Mathematics at All? " である.直訳すると『結局,なぜ数学の哲学(という分野)が存在するのか』だろうか.癖のある本なので,入門書として読まないほうが良いのは間違いない.
原書はこちら→ Why Is There Philosophy of Mathematics At All? (English Edition)
2023/5/15 追記
イアン・ハッキングは 2023年5月10日に亡くなった.
In memoriam: Ian Hacking (1936-2023) - Department of Philosophy - University of Toronto
彼の業績について大西琢朗先生(論理学 (3STEPシリーズ) の作者)が以下のブログにまとめている.
イアン・ハッキング (1936-2023) - 論理学FAQのブログ
これによるとこの本はイアン・ハッキングの遺作にあたるらしい.イアン・ハッキングのご冥福をお祈りします.

論理学の哲学

この節では論理学の哲学が主なテーマの本を紹介する.「数学の哲学」同様,論理学の哲学は論理学そのものではない.論理学の哲学というのは論理学に関する哲学的課題を扱う分野である.が,やはり,関心のある人間も多い周辺領域と考えられるため,ここに載せておく.

「論理学の哲学」の本.定評があるかどうかは知らない.今,読んでいる.

その他,論理学に関係はあるが分類に困った本

この節では,論理学に関係はあるが,分類に困ってしまった本を紹介する.

ゲ-デルと20世紀の論理学(ロジック) (1)ゲ-デルと20世紀の論理学(ロジック) (2)ゲーデルと20世紀の論理学 3 不完全性定理と算術の体系ゲーデルと20世紀の論理学 4 集合論とプラトニズム

通称四色ゲーデル.この記事の元記事では入門書に突っ込んでいたが,入門書にしては話題が広すぎるし,難しすぎるので,こっちに持ってきた.
長らく4巻が品切れだったが,最近再販された.

数理論理学周りの位相や束論の話をまとめた本.証明がとても読みづらく行間も広いので,ある程度数学ができて自力で行間を埋められる人のみが読める本と考えられる.

通称 SGL.幾何学と数理論理学における「層」という概念について述べているらしい.
圏論的論理学をやるにはこの本が現状必須らしい.

参考:哲学系の論理学の本

この節では哲学系の人が教科書として使っているらしい論理学の本のリストをあげる.数学寄りの人間であることもあって,この節は例外的に他人からの評判のみで作成し,自分が手に取ったことのない本も挙げている.そのため,コメントもしない.また,ここまでの節で登場した本と重複もある.
他分野で使われている教科書は案外知らないものなので,哲学系の人でなくとも見て面白いと思う.

番外:読むのに注意が必要な本

この節では「論理学」の本ではあるが,読むのに注意が必要な本をあげる.

「林普先生のヒルベルト研究の集大成」などと呼ばれることのある本であるが,わたしの中で解説部分に疑義が生じているので,わたし個人としては「注意して読んでほしい」と言わざるを得ない.かなり特異な説を提唱しているフシがあり,どうにも標準的な「ヒルベルト思想の解釈」をしているようには見えず,また,恣意的な文献解釈と取れるような部分があるからである.

  1. ヒルベルトプログラムに「数学の完全性を示す」ことを含めているが,英語文献を調べる限りそのような記述は見つけられない.
  2. 『公理的思惟』(『幾何学基礎論 (ちくま学芸文庫 ヒ 8-1 Math&Science)』に収録)を「ヒルベルトの数学基礎論が無矛盾性ではなく完全性を出発点としていたことを示す講演(p. 210)」としているが,わたしが読んだ限りそのような記述は見られないし,そのように読むことも難しい.

思想の専門家ではないわたしとしては,現段階でこの本の解説が「完全に間違っている」と言い切ることもできない.が,自分の読んだ他の文献との食い違いがかなり多いので「かなり疑わしい」と言わざるを得ない.今後,ドイツ語文献なども含めて詳細に検討する予定ではあるが,現段階でも「注意して読んでね.読み終わったら他の文献も読んでね」と言うことにしている.

数学史の本なのだが,どうも数理論理学関係者の紹介パートもあるようで,ごくまれに論理学の副本としてあげられることがあると知ったので,一応の注意喚起.この本に対する評価としてうなずけるものとして「数学に関心のある人を増やすことに成功したが,数学史に対して『見てきたかのような嘘をつく』という偏見を植え付けることになった本」というものがある.実のところ,この本のいくつかの部分はベルによる創作であるらしい.また,すでに歴史学的には否定されているようなこともいまだに掲載されてしまっている.たとえば,「ガロアがコーシーから迫害を受けていた」という部分はすでに否定されている(コーシーの手によるガロアに対する非公式の推薦文が存在する).そのため,歴史小説またはフィクションとして楽しむには害はないと思うが,数学史を学ぶのには全く使えない.少なくとも,この本が引用されていると,その時点でわたしはかなり警戒するようにしている.(2023/12/04)

番外:読まない方が良い本

この節では「論理学」の本ではあるが,読むことをとてもおすすめできない間違いの多い本をあげる.

明らかに必要最低限のことも理解できていないまま書いている. ベン図をわざわざ書いてストラクチャを定めず真偽を議論し始めた瞬間, この本をぶん投げた. 有名なサイエンスライターの本だが, こういう悪質な本を書くのはいかがなものかと思う. Kindle 版が出てしまったらしいので被害者が増えないことを祈る.

参考になるリンク

この記事と似たような試みをしているサイトを紹介する.

*1:この記事は元々別の記事のリバイバル版として書かれていた.この段落の上に元記事へのリンクなどがあったのだが,跡地に過ぎないものへのリンクを残しておくことに違和感を覚えたので消去した.そのため,この記事の説明を追加した.(2023/11/12 追記)

*2:「参考:哲学系の論理学の本」の節は除く.(2023/11/28 追記)

*3:クリティカル・シンキングと名前のついた和本でまともな本をあまり見たことがないので,この名称を日本で使うのは避けた方が良いかもしれない.

*4:たとえば,野球の勝利条件として不戦勝が考慮されていないなど.

*5:因果推論を帰納的論理にカウントするのが適当かどうかはわたしの知識量では判断しかねる.

*6:「個別科学の哲学」とも総称される.が,「文学の哲学」など,通常は科学に分類されないような学問領域に関する哲学的課題を扱う分野もあるので「個別の学問領域の哲学」と総称するほうが良い気もする.(2024/01/29 追記)【汎用注釈】〇〇の哲学 - Sokratesさんの備忘録ないし雑記帳(追記終わり)