Sokratesさんの備忘録ないし雑記帳

書きたいことを書いている.駄文注意.

学術系ブックリストのリスト

ネット上で閲覧できる学術系ブックリストのリスト.網羅性に過度な期待はしないでください.

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【汎用注釈】〇〇の哲学

「数学の哲学」,「哲学の哲学」,「物理学の哲学」という文字列から,ふざけているような印象を受けるかもしれない.しかし,これが正式名称の分野である.一般に「○○の哲学(Philosophy of ○○)」(○○は学術分野の名前)とは,○○という分野に関わる哲学のイシューを研究する分野である.「個別科学の哲学」と総称されることが多いが,○○に普通「科学」として扱われない分野(数学や哲学)も入ることを鑑みると「個別学問領域の哲学」などと呼んだ方が良いように思う.
(2023/12/29 追記)Philosophy of Science Books in Japanese によると「科学哲学」と言った場合,やはり,「経験科学の哲学」を指す場合が多く,「数学の哲学」や「論理学の哲学」などは科学哲学に含まないのが通常の解釈らしい.なので,「個別科学の哲学」と言った場合,暗に「個別(経験)科学の哲学」を指しており,「数学の哲学」や「哲学の哲学」,「論理学の哲学」などは(名前の付け方が似ているだけで)含まれないと思うべきなのかも知れない.(追記終わり)

Beamer でスライドと配布資料を同時に作る方法

この記事は TeX & LaTeX Advent Calendar 2023 - Adventar の 19日目の記事です.遅刻して申し訳ないです.
adventar.org
←昨日 相関係数格付けチェックを作る ~目指せ相関係数ソムリエ!~ - TeX Alchemist Online
→明日 [TeX] [LaTeX] 簡単に 𝕏 を出力したい。 - East Opera 2024

数学徒は Beamer でスライドを作る人が多いです.そういう場合,スライドファイル自体を配布資料とする人も多いです.しかし,配布資料にアニメーション(一部の項目を隠した状態のスライドとか)が残ってしまっている人をたくさん見かけます.そうすると,配布された側としては次のように感じます:

配布資料は前後のスライドなどを確認するのに使いたいのであって,アニメーションそのものを見たいわけではない.無駄にファイルの容量デカくするな💢💢💢
印刷するときも無駄に大変だろ💢💢💢

そうならないようにするためにアニメーションをなくしたスライドも欲しくなるはずです.Beamer にはそういうのを簡単に作る機能を提供しています.
この記事は,その使い方を知らない人や「その機能使うの忘れがち」となる人が少しだけ幸せになる記事のはずです,たぶん.

  • Beamer の handout オプション
  • スライドと配布資料を同時に作ろう
  • まとめ
  • おまけ:サンプル(2023/12/26 追加)
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ヒルベルトの有限算術のはなし ~1+1=2 笑えない数学 落ち穂拾い~

この記事は Mathematical Logic Advent Calendar 2023 - AdventarMath Advent Calendar 2023 - Adventar の16日目の記事である.より正確にはMathematical Logic Advent Calendar 2023 - Adventarの主催に書くことを強要された記事である.
adventar.org
←昨日 Robustly Isomorphic Models | Mathlog
→明日 空白

adventar.org
←昨日 エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス・関数 - 電波通信
→明日 asterisque さん

以前,NHK がヒルベルトプログラム周りを紹介する番組を放送したものの,その内容の大半が誤っていたという大きな事故があった.多くの目に余る間違いに加え,その影響力の大きさを鑑みて,わたしは間違っていた内容を批判・訂正するための記事を書いた.
sokrates7chaos.hatenablog.com

この記事は上記の記事で紹介しきれなかったヒルベルトプログラムの話,特に「有限算術」という概念について説明するための記事である.現代の数理論理学(というか証明論)の源流の一つの話である.歴史の専門家ではない人間が書いているので気楽に読んでね.

  • はじめに
  • ヒルベルトプログラムとは何か
  • 有限算術
  • 総括
  • 参考文献
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【備忘録】(マイナス)×(マイナス)=(プラス)

環の公理から \( (-m)\times (-n) = m \times n \) を証明する.自分用のメモを公開しているというノリなので,説明が不十分な箇所があるかもしれないが,追記するかも知れないし,しないかも知れない.

  • 環の公理
  • いくつかの補題
  • (マイナス)✕(マイナス)=(プラス)
  • 関連文献
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今,「論理」を学ぶ人のために

こんなツイートを見た.


『論理哲学論考』は哲学書として大事な本らしいが,「論理」を勉強したい人間が最初に手を出してよい本でないことは間違いない.こういうことを防ぐためにも次のような記事の更新をたびたびしてきた.
sokrates7chaos.hatenablog.com
しかし,この記事は単に論理学およびその周辺領域の本を並べてコメントしているだけなので,上記の事態を防げていないような疑惑が常々あった.「論理」の「何を勉強すればよいか」がわからんから「とりあえず,有名な本を手に取ればいいだろう」という発想をし,結果上記のツイートのような事態になるわけだが,「何を勉強すればよいか」について『論理学およびその周辺領域の本 - Sokratesさんの備忘録ないし雑記帳』は何も語っていない.そのうえ,語らせる予定もない.
そういうわけで,「『論理』に興味を持ったが何を勉強すればよいのか,どんな本を読めばよいのかわからない」という青少年のために「こういうの勉強するといいんじゃないですかね」と提案するための記事である.役に立たなかったらごめんね.

  • 君は「論理」の何に興味があるのか
  • 推理小説などで「論理」を強調されてあこがれたから
    • 最初にどの本を読むべきか
  • ビジネスの場で「論理」的に考えて「論理」的に話すことを周りから求められたから
    • 最初にどの本を読むべきか
  • 科学における「推論」の扱いが気になったから
    • 最初にどの本を読むべきか
  • 数学をしていて,「この基盤にあると思われる『論理』とはなんだろう」となったから
    • 最初にどの本を読むべきか
  • 情報科学の技術的な道具として「論理」が必要になったから
    • 最初にどの本を読むべきか
  • 哲学の道具として「論理」が必要になったから
    • 最初にどの本を読むべきか
  • 言語学の道具として「論理」が必要になったから(2023/11/17 追記)
    • 最初にどの本を読むべきか
  • 上記以外の動機の場合
    • 最初にどの本を読むべきか
  • 総括
  • 関連するインターネットコンテンツ
    • 似たような目的のページ
    • 参考になるかもしれないページ
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1+1=2 笑えない数学へのコメント・反応に対する応答

この記事は 【速報版】 1+1=2 笑えない数学 - Sokratesさんの備忘録ないし雑記帳【詳細版】 1+1=2 笑えない数学 ~笑わない数学の笑えない間違いの話~ - Sokratesさんの備忘録ないし雑記帳 へ寄せられた反応やコメントへの返信のための記事である。
sokrates7chaos.hatenablog.com
sokrates7chaos.hatenablog.com

最初は 【詳細版】 1+1=2 笑えない数学 ~笑わない数学の笑えない間違いの話~ - Sokratesさんの備忘録ないし雑記帳 の中で返信するようにしていたのだが、本文が三万五千字を越えているのもあって、更新のたびに凄まじい時間がかかってしまう。そのため、反応やコメントへの返信については別記事に分けることにした。はてなブログのサーバーにも申し訳ないし。そのため、この記事は先の 【速報版】 1+1=2 笑えない数学 - Sokratesさんの備忘録ないし雑記帳【詳細版】 1+1=2 笑えない数学 ~笑わない数学の笑えない間違いの話~ - Sokratesさんの備忘録ないし雑記帳 を読了済みであることを前提として書いている。ご了承いただきたい。最低限,どっちかは読んでからおいで.
また、すべてのコメントや反応へ返信することはできないので、そこもご了承いただきたい。応答なくても,はてなブックマークのコメントはできるだけ全部読んでいるので,返信なかったら「あぁ,著者のやつ,返信内容思いつかなかったかぁ」くらいに思っといてください.

  • はてなブックマークに寄せられたコメントへの返信
    • 【速報版】へのコメントに対する返信
      • いろんなコメントへの返信
      • 【速報版】記事の不十分な内容被害者の皆さま
    • 【詳細版】へのコメントに対する返信
      • いろんなコメントへの返信
      • 難しい長い系のコメントに対する返信
      • 大変良い疑問を含んだコメントに対する返信
      • NHK やしかるべき機関に報告するべきだとするコメントへの返信
      • 不当な批判が含まれていると思われたコメントへの返信
  • Twitter で見かけた反応への応答
    • 不当な批判が含まれていると思われたコメントへの返信
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【詳細版】 1+1=2 笑えない数学 ~笑わない数学の笑えない間違いの話~

NHK で放映された『笑わない数学』という番組の次の回が話題になっていた.
www.nhk.jp
企画意図としては「\(1+1=2\) という式を通して数学基礎論という分野を紹介する」というものだったのだが,怪しい説明や誤解を招く説明,端的に誤っている説明があった.というか,全体を通してそういうものがとても多かった.どう少なく見積もっても番組の内容の半分以上がそういうものになっている.正直,全然笑えない.笑わないのではなく笑えない.
そういった説明に注意喚起を促し,簡単にだが訂正をするための記事を以前書いた.その記事は速報性を重視して書いており,「ここが怪しい」「ここが間違っている」ということだけを伝えることを目的としていたため,詳細や「具体的にどう直すべきだったのか」という点の記述が不十分であった.というか,一部わたしも素でまちがったこといくつか書いちゃった(訂正・取り消し線による削除済み).
sokrates7chaos.hatenablog.com
やっぱり,3,4時間で書いた記事はダメ.いや,3,4時間で書いた記事よりも間違っている番組にゴーサインを出した自称専門家の監修者*1の方がまずいんか?わからん.
ともかく,この記事はその際に書くと宣言していたフルバージョンである.この記事では番組の説明の問題点を指摘し,どう間違っていたかを書いた後,番組の改善案を考察し,提案する.
『笑わない数学』は評判の良い番組のようだ.少なくとも,私が見た「1+1=2」の回は映像作品としてよくできていた.実際,「後半ほとんど嘘しか言っていないじゃないか」と思いながらも最後まで見れてしまった.これはとてもおそろしいことで,彼らの映像技術は「(たとえ誤ったものであっても)主張を最後まで飽きることなく見せる(伝える)ことができる」力があるということを示唆する.
【速報版】に対する反応などを見る限り,この記事を最後まで読み通せる人は少ないであろう.「おもしろかったら間違っていてもそれでいいじゃん」とする刹那主義者たちは読もうとすら思わないだろう.残念なことに読まれなかった部分の主張は,当然,伝わらない.
『笑わない数学』スタッフとわたしの「伝えること」に対する力の差は歴然としている.こういう「マスコミの誤った報道に対する訂正」をめぐる戦いは,最初から負けが見えているものなのかもしれない.それでも,わたしは訂正記事を書こう.せめて,心ある人には届くと信じて.

  • わたしのスタンスについて(2023/11/09 追記)
  • なぜこの記事はこんなに長いのかについて(2023/11/09 追記)
  • 批判・疑念の要旨
  • 「ペアノの公理」の説明についての批判
    • 引用元に書いてないことを書くんじゃない
    • 現代的なペアノの公理の説明だとみなしても誤っている点
      • 公理的方法について
      • 現代的なペアノの公理の解説として何がダメだったか
    • ペアノの公理の説明に対する批判のまとめ
  • ヒルベルトプログラムの説明というより番組後半全体に対する批判
    • 矛盾の何がまずいか
      • ラッセルのパラドクスの意義について
    • ヒルベルトプログラムとは何か
      • 有限な算術って?
      • 「完全な数学」というのはどこから出てきたのか
    • 不完全性定理について
      • 完全性とは何か
      • スタッフはそもそも完全性の意味を理解していないのではないか
      • 「証明も反証もできない命題」は「難問」……?
      • 完全な数学......?
      • (第一)不完全性定理とヒルベルトプログラム
      • (第二)不完全性定理とヒルベルトプログラム
      • 誤解に基づく批判の再生産はやめてくれ
    • ヒルベルトプログラムというか番組後半に対する批判まとめ
  • 非ユークリッド幾何学は「数の概念の厳密化」の「きっかけ」になったとする説明に対する疑念
    • 非ユークリッド幾何学は「数の概念の厳密化」の「きっかけ」になったとする説明に対する疑念のまとめ
  • 「ラッセルがヒルベルトプログラムに魅了された」というナレーションに対する疑念
    • 「ラッセルがヒルベルトプログラムに魅了された」というナレーションに対する疑念のまとめ
  • 「\(1+1=2\)」の回はどう改善されるべきか
  • 総括
  • 謝辞
  • 参考文献
  • 直接参考にしなかったが,この話に関連する文献
  • おまけ:ラッセルのパラドクスと床屋のパラドクスについて
    • ラッセルのパラドクスとは
    • 床屋のパラドクスとの対応
    • 比喩から戻ってこれないバカをパンサー尾形に演じさせるなよ.......
  • 過去に起きた「笑わない数学」のミス
  • コメントや反応に対する返信
  • はてなブログランキング掲載

*1:を作ったスタッフにゴーサインを出した専門家の監修者」の部分は 2023/11/10 に修正されたものである.これは軽口とはいえ,誰に一番問題があったのかの自分のスタンスに合わないと思ったので修正した.この記事を書き始めた当初はどこに一番の問題があったのかの切り分けができていなかったようである.スタッフの方には申し訳なく思っている.(2023/11/10 追記)

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『土偶を読むを読む』を読んで

2021年(この記事を書いている現在から二年前)に 『土偶を読む――130年間解かれなかった縄文神話の謎』 という本が話題になっていたことがあるらしい.正直,わたしはこの本を知らなかったのだが,サントリー学芸賞*1という名誉ある賞をもらったらしい.
www.suntory.co.jp
賞をもらっている以上, 『土偶を読む――130年間解かれなかった縄文神話の謎』 はさぞかし素晴らしい本なのだろうと思いきや,土偶やその周辺領域の研究をしている考古学者たちには評判が良くないらしい.たとえば,次の横浜の学芸員の方の記事は『土偶を読む――130年間解かれなかった縄文神話の謎』の根本的な部分に対して批判を加えている.
note.com
2023年4月に『土偶を読む――130年間解かれなかった縄文神話の謎』 に対する反論が主なテーマの『土偶を読むを読む』が発刊された.

この記事はこの『土偶を読むを読む』の感想を述べるためのものである.一般書とはいえ,学術についての本であるから,当然ネタバレには一切配慮しないが,事前情報無しで『土偶を読む――130年間解かれなかった縄文神話の謎』および『土偶を読むを読む』を読みたい人は,ここでブラウザのバックボタンを押すことを薦める.

  • 土偶を読むを読む』をわたしが読むにあたって
    • この記事を書いている人がこの本を読んだ背景
    • この記事を書いている人の土偶周辺についての知識
  • 土偶を読むを読む』の背景
    • 土偶を読む』およびその作者について
    • 土偶を読む』の検証者について
  • 土偶を読むを読む』全体に対しての感想
  • 土偶を読むを読む』の各章についての感想
    • はじめに
    • 検証 土偶を読む(望月昭秀)
    • 土偶とは何か?」の研究史(白鳥兄弟)
    • 〈インタビュー〉今、縄文研究は?(山田康弘)
    • 物語の語り手を絶対に信用するな。だが私たちは信用してしまう(松井実)
    • 土偶は変化する。――合掌・「中空」土偶→遮光器土偶→結髪/刺突文土偶の型式編年(金子昭彦)
    • 植物と土偶を巡る考古対談(佐々木由香・小久保拓也・山科哲)
    • 考古学・人類学の関係史と『土偶を読む』(吉田泰幸)
    • 実験:「ハート形土偶サトイモ説」(望月昭秀)
    • 知の「鑑定人」――専門知批判は専門知否定であってはならない(菅豊)
    • おわりに
  • 総括
  • 土偶を読むを読む』関連文献の一覧
  • 後日譚
    • 土偶を読むを読む』の著者が『土偶を読む』の著者に討論を打診した話
    • 土偶を読む』の説を広めた媒体が『土偶を読むを読む』の作者にインタビューした話
    • 土偶を読むを読む』の二版でアップデートが起きていた話(2023/10/25 追記)
    • このブログ記事が著者たちに届いてしまった話(2023/10/23 追記)
  • 蛇足
    • 「『土偶を読むを読む』を単体で読んで面白いのか」問題について
    • 土偶を読む』のサントリー賞受賞についてのコメント

*1:正直に言うと,今回の件で初めてサントリー学芸賞という賞を知った.たぶん,日本の人文系の間では有名な賞なのだろう.ただ,以前ちらっと目を通して「おや?これは変だぞ」と思った『土偶を読む』ではない本が別の年に受賞していたことを知ったため,この賞の質自体を少し疑っている.

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