渡邉 雅子の『論理的思考とは何か (岩波新書)』を読んだ.この本の著者が「論理の社会的構築物説」のようなことを主張しているという認識だったので,一応目を通しておこうと思ったのである.正直,期待していたような内容(論理の社会的構築物説の論証)では全くなかったので,感想をTwitterあたりに垂れ流して,『論理的思考とは何か』とはバイバイしようと最初は考えていた.しかし,この本に対してコメントをちゃんと残しておいた方が良いかと思う出来事があったので,この記事を書くことにした.
本記事では『論理的思考とは何か (岩波新書) 』の内容を把握されていることを前提として話をする*1.なお,同内容と思われる『「論理的思考」の社会的構築: フランスの思考表現スタイルと言葉の教育』や『「論理的思考」の文化的基盤 4つの思考表現スタイル』*2については参照せずに書いていることはフェアネスのためにこの時点で宣言しておく*3.
(2025/3/7 追記)この本が論理学の本ではなく,社会学(文化比較)の本であることくらい承知している.その上で,
- 論理学の論理を扱わず,「本質論理」なる独自概念を扱うと主張する以上は,研究対象の「本質論理」について,(説明的で良いので)定義を行う必要があるができていない*4.
- キーコンセプトすら説明できていないのに明瞭な議論などできるわけがない.
- 奇妙なことに「本質論理」は一般的に受容されている「論理」という語ともずれていることだけは「一般に論理的な文章でない」と著者本人も認めている感想文を「論理的文章」と扱っていることからわかる.(2026/1/8 追記)
- 社会学の議論としても成立していない(2025/3/27 追記)*5
- 「論理」に社会学的なアプローチをする以上は,論理について先行して研究している論理学やその隣接分野について,ある程度理解をしておく必要がある.が,著者の理解はかなり甘めに見てもとても怪しい.
- 恣意的なデータの解釈をした議論が行われている.まともな根拠付けができているとは思えない.そのため,「論理的思考とは何か」(社会学的に)明らかにするという著者の目的は全く達成されておらず,「論理的思考」について何らかの示唆を与える段階の研究ではない.
- 論理学や議論学への理解が不十分なため,(2025/4/1 追記)(仮に議論の結論を受け入れたとしても)(追記終わり)この本に対する著者の意義付けはおかしい.
という話をしている.コメントするなら要約くらい読んでほしいが,本文最初の要約ですら読み取り困難な人が居るようなので,再要約した.
(追記終わり)
(2025/8/14 追記 2025/8/21 改稿)「一般書(新書)に対して厳しすぎるのではないか」という意見を最近よくいただくようになった.しかし,『論理的思考とは何か (岩波新書)』は「高校生などに向けて自分の研究を説明する」という体裁で書かている本である.したがって,議論の詳細が省かれているなどは当然あるだろうが,研究の骨子は保たれた説明のはずである(そうでないなら,その時点でもかなり問題のある本である).この記事で批判検討しているのは「その研究の前提として提示された物事」に対する誤認やその研究の骨子そのものが抱えていると考えられる問題についてである.したがって,厳しく感じるのであれば,それだけ「この本で紹介されている研究が抱えている問題はかなり深刻だ」ということに過ぎないと考えられる.(追記終わり)
- 著者の主張の要約とわたしの感想・批判の要約
- 本質論理とは何か
- 著者の論理学に対する認識と実際の現代の論理学やその周辺領域との違いについて
- 現代論理学で扱う「論理」
- 論理学における論証
- 形式論理学・非形式論理学
- 議論学 Argumentation theory
- 著者の認識と実際の論理学の違い
- 著者の論理学やその周辺領域に対する誤解による問題
- 不十分な論証
- 「作文の型」が論理と思考の型を作る?
- 国を割り当てる必要があったのか?
- 西洋の思考4パターンとの関係は?
- 『論理的思考とは何か』の真の意義は何か
- 結論(2025/03/28 改稿)
- 参考文献
- まともに論理について勉強するためには(2025/03/26 追記 2025/4/27 節タイトル修正)
- 補遺:「『本質論理』は『論理的文章の型』」と理解することができない点について(2025/10/12)
- おまけ:その他『論理的思考とは何か』について思ったこと
- おまけ:論理の社会構築説を示すには
- はてなブログランキング掲載(2025/03/10 追記)
- (2025/10/12 追記 11/17 改稿 2026/06/13 移動)【Youtube の動画 『「学問」を作った男、アリストテレス』 から流れてきた方へ】
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