Sokratesさんの備忘録ないし雑記帳

書きたいことを書いている.駄文注意.

シン・ウルトラマンを観て

この記事は映画『シン・ウルトラマン』を観て思ったことを書き散らしたものである.もっと凝ったタイトルにすることも考えたが,面倒なので上のようなタイトルになった(考えすぎてわけがわからなくなったとも言う).
この記事は映画『シン・ウルトラマン』のネタバレを含む.ネタバレが嫌な方は,映画『シン・ウルトラマン』を視聴後にまた来てほしい.


































この記事を書いている人とウルトラシリーズのはなし

わたしはウルトラシリーズが好きである.ファンかと言われるとよくわからない.ウルトラマンゼロが出現して以降の話は正直追えていない.なぜか『ウルトラマンX』と『ウルトラマンZ』だけは全話見た.初代『ウルトラマン』はだいぶ前に全話観たはずなのだが,正直,いろいろ記憶から抜け落ちている回も多く,今回の記事を書くに当たって,「ガボラの回ってどんな話だっけ」となってしまった().
まあ,そんな人間の書く記事なのであまり大したことは書いていない.いいとこトイレの落書きである.あまり気合を入れずにテキトーに読んでいただければ幸いである.

この記事を書いている人の思う初代ウルトラマンのはなし

最初にこの記事を書いている人の思う初代ウルトラマンのキャラクター像のようなものだけ述べておく.
わたしはウルトラマンを正義の味方と思っていない.というのは,ウルトラマンことハヤタ隊員は結構劇中で正義かどうかよくわからない行動をときどきしているのである.彼のやらかし(?)をいくつかピックアップしてみる.

  • ファーストコンタクト時に事故とはいえ地球人ハヤタ隊員を殺害している
    • ハヤタ隊員と一体同心になる際も実のところまともにハヤタ隊員と会話していない.「ベーターカプセルを使ったらどうなるんだ」と尋ねるハヤタ隊員に対し,きちんと答えず高笑いをするのみである.一心同体になって戦うんだからちゃんと説明しろよ.「まぁ,悪いようにはせんからよぉ」と示談を持ちかけてくるヤ○ザかよ.
  • バルタン星人一族郎党皆殺し.我が地球にも昔「ナチス」と呼ばれる民族大虐殺をやらかした集団が居てな(白目).
    • その後二代目が出てくるから「バルタン星人」という種が滅んだわけではないのだろうが,無抵抗な20億3千万人を一気に殺すのはどうかと思うよ.
  • 怪獣化したとはいえ地球人ジャミラを殺害.この件については緊急回避が認められるような気もする.

今どき「義兄弟」の契りを結ぶとか,ときどきヤ○ザキックを使うのも相まって,私の中では「頑張って正義の味方になろうとしている真面目で生き方が不器用なヤ○ザ」というのが彼に対する評価である(いろんな人に怒られそうな表現).なんだかんだ暴力で解決しようとするし…….その割に倒した怪獣に「仕方なかったんだ.許してくれ」って謝っちゃうし……*1
逆に必ずしも「正義」と言い切れない人間臭いところが初代ウルトラマンの魅力だとも思う.勧善懲悪ばかりでないからこそウルトラシリーズはおもしろいのだ.

シン・ウルトラマンの内容の復習

シン・ウルトラマンの視聴済み前提の記事のつもりだが,ストーリーラインなどの復習をしておく*2.ついでに話しの切れ目に感想らしきものも述べる.

ストーリー

シン・ウルトラマンのストーリーラインは大きく分けて五つのパートでできている.この記事ではアバンタイトルを含めた6つのパートに分けて説明をする.

禍特対ができるまで

巨大不明生物出現!次々と襲いかかってくる巨大不明生物(禍威獣)に対抗して,日本国政府禍威獣特設対策室,通称禍特対を設立.

ここまでの流れはウルトラQを元ネタとしたスライドショー(一部に動画あり)によって説明される.正直,カッコいい.ウルトラQを元ネタとしているわりに,元ネタがわからなくても本編の理解に差し支えはない.

本編は禍特対の三度目の出動シーンから始まる.

ネロンガと銀色の巨人

禍威獣第7号「ネロンガ」出現!禍特対出動である.禍特対はさまざまな手を使ってネロンガに対応するが,手詰まりになってしまう.そんな中,上空より赤い飛翔体が落ちてくる.その衝撃で巻き上がる粉塵と土煙.その中から銀色の巨人が立ち上がる.銀色の巨人はネロンガに異常なエネルギー量の光線を当てて倒す.
その翌日,禍特対に新たなメンバーとして公安調査庁から出向の浅見弘子分析官がやってくる.浅見分析官は神永新二作戦立案担当官とバディを組むことになる.

ウルトラマンが最初に姿を表すわけだが,顔が A タイプ*3っぽい.公式の映像によるとこのシーンのスペシウム光線のポーズは庵野秀明氏のモーションキャプチャーによるらしい.

ガボラ襲来

浅見の報告書によって,銀色の巨人は「ウルトラマン」と呼称されるようになる.ウルトラマンは外星人と推測されたため,各国はウルトラマンの情報を求めて錯綜を始める.
そんな中,地下核廃棄物貯蔵施設に禍威獣ガボラが向かっていることがわかる.禍特対は防衛省にミサイルの請求書を押し付けながら,ガボラを食い止めるべく手を重ねるが,地下核廃棄物貯蔵施設の近くまでガボラを寄せ付けてしまう.
ここで,神永がウルトラマンに変身する!ガボラ徒手空拳で倒し,どこかへと連れ去っていく.スペシウム光線を使わずにガボラを倒したウルトラマンの戦いを「放射性物質を撒き散らさないようにするため」と推測した禍特対の面々はウルトラマンが人類の味方であることを確信する.

マーベル版のウルトラマンが,怪獣を倒すためなら平気で(ほぼ無傷の)橋を自分の手で壊していたのに対して,日本のウルトラマンはきちんと被害を少なくするように戦うんだよと見せてくれた.これにはリュウさんも「なんて下手くそな戦い方だ」とブチ切れることはないだろう.

ザラブの謀略

地球の国々と友好を結びに来たというザラブ星人が禍特対にやってきた.手始めにザラブ星人は日本政府と友好条約を結ぶ.しかし,その内容は実質ザラブ星人支配下に日本政府が入るような不平等な条約だった.ザラブ星人の動きを訝しんだ神永は公安時代の同僚の加賀美に情報を探らせる.加賀美から得た情報からザラブ星人の企みを察知した神永ことウルトラマン.しかし,その企みを察知した直後にザラブ星人に拘束されてしまう.
その晩,ウルトラマンが横須賀に出現.街を破壊して去っていく.ウルトラマンは敵になってしまったのか?政府は外星人攻撃事態対策本部を設置した.その早すぎる対応に訝しむ禍特対の面々.さらに,神永の乗り捨てられたと思しき自動車も発見され,違和感は加速していく.そんな中,ウルトラマンの変身する男性を映した動画がネットに公開される.なんとその男性は行方不明になっている神永だった.
横須賀の事件を口実にウルトラマンを地球人に害意のある外星人と見なしたザラブ星人は日本政府に「ウルトラマン抹殺計画」を提案.日本政府はその計画を受け入れてしまう.
そんなある日,浅見は自分のかばんの中に神永の名前が書かれた封筒が入っているのを発見する.その封筒の中には銀色の棒と「β-capsule 君に託す」と書かれたメモが入っていた.浅見は神永のみに何が起きたのかを察する.
ウルトラマンが再び出現し,禍特対に出動命令が下る.そこに神永の元同僚を名乗る加賀美接触してくる.浅見は禍特対班長田村君男に別行動の許可を取り,加賀美の話を聞く.加賀美は神永がザラブに拉致されたのを察知しており,さらにその居場所を突き止めていた.浅見は加賀美の情報を元に神永を迎えに行く.その場所はウルトラマンが暴れている場所の近くにある解体予定のビルだった.
ついに神永と再会する浅見.神永は自身がウルトラマンであることを浅見に認める.激昂して神永をビンタしてしまう浅見.「君が同じ立場だったらどうしていた?」と尋ねて事情の理解を求める神永.気を静めて神永の拘束を解く浅見.浅見は神永に尋ねる.
「あなたは地球人?それとも外星人?」
神永は答える.
「両方だ」
浅見は神永に託されていた銀色の棒−−ベーターカプセルを返す.そして,「にせウルトラマン」を倒すように神永に伝えた瞬間,前触れもなくビルの壁を壊しながら巨大な手が伸びてきて,浅見が捕まってしまう.なんと,その手の持ち主はにせウルトラマンだった.浅見を助けるべく神永はウルトラマンに変身する.
ウルトラマンは戦いの末,浅見をにせウルトラマンから取り返す.にせウルトラマンの正体はザラブ星人であった.逃げるザラブ星人と空中戦をするウルトラマンザラブ星人はウルトラスラッシュでついにとどめを刺されるのであった.

ウルトラマン恒例,正体バレイベント.それよりもザラブ星人の声が津田健次郎氏で笑った.ハマり過ぎなんだよなあ.日本の公安がザラブ星人を出し抜けるレベルで優秀なのも笑った.正体を明かした神永と浅見の対話はどことなくウルトラセブン最終話のダンとアンヌの対話を彷彿とさせる.

メフィラスのビジネス

ザラブが倒された後,各国政府は姿を消した神永を追って奔走する.また,浅見もマスコミ対応に辟易したのか姿を消してしまう.
そんなある日,巨大化した浅見が丸の内に出現する.殺到する群衆.対応を協議する禍特対を含めた警察,自衛隊.そのとき,天から「これはプレゼンテーションである」と主張する声が響く.その場に倒れる巨大な浅見.
禍特対は浅見の体を調査するが,「何もわからないことがわかる」という有様.外星人の科学力の前に諦念の湧き上がる禍特対の科学者.そんなとき,禍特対が会議をしていた部屋に外星人0号メフィラスを名乗る人物が突然出現する.メフィラスは地球人類に浅見をウルトラマン同様に巨大化させた装置である「ベーターボックス」を提供する用意があると言う.
メフィラスは日本政府と「ベーターボックス」を提供する密約を交わした後,ウルトラマンはメフィラスと対話する.ウルトラマンは対話の中でメフィラスの目的が自分と相容れないことを悟る. 「ベーターボックス」の奪還をかけて,ウルトラマンと禍特対はメフィラスと対峙することになる.

ここが『シン・ウルトラマン』最大の山場かもしれない.メフィラスの「ベーターボックス」奪還のために浅見の匂いを嗅いでその匂いを追うウルトラマンはとてもおもしろい.何より,ウルトラマンとメフィラスのギリギリの殴り合いがとても良かった.

ゼットンを倒せ

なんやかんや(だいたいゾーフィのおかげ)でメフィラスを追い返せた禍特対とウルトラマンの前に最後の敵,ゼットンが現れる.地球人類とウルトラマンは力を合わせて,ゼットンを打ち倒すが,ウルトラマンプランクブレーンを漂うことになる.ウルトラマンと神永をゾーフィが分離してエンド.

熱い展開は熱い展開なのだが…….ここの展開については少し思うところがあり,後でグチグチ書かせてもらう.

登場キャラクター

主な登場キャラクターを紹介する.

ウルトラマン

地球人を知るために地球人と一心同体となった外星人.
神永新二(演:斉藤工
開幕直後に死ぬので,劇中の大半はウルトラマン(と一心同体になった人間)として行動している.いわゆるウルトラマンの人間体.禍特対の作戦立案担当官.旧作との対応はあまり意味はないが,強いて言えばハヤタ隊員が対応する.
いまいちよくわかっていないが,ウルトラマンと一心同体になった段階で,「記憶は保っているが人間としての情感は失われている*4」状態になっているらしい.そのため,序盤は「人間のように見えるが明らかに異質な何か」として振る舞う.斉藤工氏の好演が光る.
公安出身らしく,身を隠すのは異常にうまい.禍特対にある彼のデスク,使われていたの最初の数十分くらいの間だけなのでは……?

ウルトラマン(CV:高橋一生
ご存知主人公.人間体は神永新二.本名は「リピア」らしい.旧作と違い「ウルトラマン」は自称*5ではなく,浅見さんがつけた仮称が定着してしまったもの.まーた,地球に来るなり地球人を殺しました.
地球人の「自己犠牲」という概念に興味を持った結果,禁じられているにも関わらず地球人と一心同体になった外星人.「現地住民のことを知りたい」という思いから一心同体となって生活したがるあたり人類学者っぽい.「人類学者なら現地住民の生活を変えるような行動は控えろよ」とも思うが.
良くも悪くもこの話の中心人物.この人のせいで地球人は外星人から狙われることになってしまった.反面,この人が居なかったらネロンガとかガボラとかによる被害はもっとひどかったに違いないし,ゼットンも倒せなかった.こう書くと,外星人同士の政治に疎いだけの人にも見えてくるな.対生物兵器特攻持ってそうだけど.
「シン・ウルトラマン」になっても生き方が不器用なのは治らなかったらしく,メフィラス星人が人間とビジネスをうまくやっていることと好対照である.
CV:高橋一生だが,ウルトラマン形態のときでも「地球人としてしゃべるとき(メフィラス戦の直前など)」は斉藤工氏が喋っていたような気がする(勘違いかもしれない).「シュワッチ」などの掛け声は出さず無言で戦う.

2020/7/22 追記 公式がやっている名台詞選挙によるとウルトラマンの本名の表記は「リピアー」が正しいらしい。
https://shin-ultraman.jp/campaign/

地球人

画面上に出てくる地球人は日本人ばかり.
浅見弘子(演:長澤まさみ
巨大化させられるタイプのヒロイン.禍特対の分析官.旧作だとアキコ隊員が対応する.どうして,ウルトラマンのヒロインは巨大化させられるんだ.
神永さんとバディを組まされたのに,一緒に居ないことが多い.いや,同じ画面に収まるシーンは結構あるんだけども,画面外で一緒にいなさそうな雰囲気.それでも,神永さん的に「相棒」だと信頼しているのか,ザラブ星人からベーターカプセルを隠すために彼女のカバンにベーターカプセルを仕込んだり,捕まった自分自身を助ける人間として指名したりしていた.
メフィラスに巨大化させられた挙げ句ネットにさらされたり,その結果お風呂に長期間入れなかったり,ウルトラマンから匂いを嗅がれたり,ヒロインの宿命か受難も多い.ところで,ウルトラマンとザラブの戦いの最中に,かなり高めに放り投げられて,ウルトラマンにキャッチさせられていたけど,良く無事だったね…….ウルトラマンのキャッチの仕方によっては,全身バキバキだったよね……*6
死地に赴くウルトラマンを見送った後,一人だけ泣いているなどのヒロインらしいシーンも多いが,気合を入れるときにお尻を叩くなど,変なところでおじさんくさい.男社会で苦労した反動かしら…….

田村君男(演:西島秀俊
禍特対の班長.旧作だとムラマツキャップが対応する.
いろいろとアレな禍特対の面々を取りまとめるすごい人.絶対裏でいろいろ苦労しているはずなのに,それを中々表に出さない本当にすごい人.
一番印象的なのが,ウルトラマンの自己犠牲を前提にした作戦に対して「君を犠牲にすることはできない」と切り返したシーン.いや,ホントなんで,外星人のウルトラマンが地球人類のために犠牲にならないといかんのだ.
画面に居るとなんとなく安心する禍特対の良心.

滝明久(演:有岡大貴)
禍特対おかかえの科学者その1.旧作で対応するのはイデ隊員あたりかしら…….
船縁さんに「滝くん」と呼ばれまくっていたオタク男子.外星人の圧倒的科学力に心が折れてしまう方の科学者.でも,最後頑張る.一度心が折れて,「ウルトラマンに全部任せればいいじゃん」という虚無感に襲われたり,ウルトラマンに励まされて復活したり旧作「小さな英雄」のイデ隊員を彷彿とさせる.
ラスボスのゼットンを葬る作戦は滝くんを中心として開催された国際会議で立案された.この作戦,ホントはウルトラマンの助けなしで実行したかったんだろうが,時間の関係でウルトラマンが代行した.無重力弾は残念ながら開発できなかった…….

船縁由美(演:早見あかり
禍特対おかかえの科学者その2.旧作で対応する人物はよくわからない*7
判明している中では禍特対唯一の既婚者.旦那さんは画面には出てこないけど.
おっとりした見た目に反して,劇中唯一セリフを「ピー音」で修正された方.正直,聞こえちゃってるのでピー音にあまり意味はない.関係ないが,彼女の「滝くん」ってセリフ,なぜだかドキドキする.もっと「滝くん」って言って欲しい.
外星人の圧倒的科学力に心が折れなかった楽観的な人.もしかしたらお菓子のやけ食いでストレスを発散していた辺り,ストレスの逃し方がうまいだけなのかも.
浅見さんがウルトラマンに匂いを嗅がれた理由はこの人の提案した作戦のせい.メフィラスの反応を見る限り,それ以外どうしようもなかったぽいけど.

宗像龍彦(演:田中哲司
禍特対の室長.禍威獣に対応する現場の面々のために上と交渉する人.
禍特対の指示で調達したミサイルなのに防衛省に支払いをさせようとする辺り,禍特対の予算は潤沢ではないらしい…….ちゃんと現場の面々のためにいろいろ骨を折ってくれるあたり良い上司なのだとは思う.

大隈泰司(演:嶋田久作
劇中内の内閣総理大臣.演者の方が『シン・ゴジラ』で総理の部下をやっていらしたので,その人物が出世した姿かと思いきや,名前が違うので,別人らしい.ザラブと握手をしながらの笑顔が素敵.

小室肇(演:岩松了
劇中内の防災大臣.禍特対は防災大臣直属のチームらしい.人を見る目に定評のある人物で,にせウルトラマンの暴れる姿を受けてウルトラマン抹殺計画を提案するザラブに対し「ホントにウルトラマンを倒していいのか?」と訝しんでいた.結果的に彼の人を見る目は正しかった.

加賀美(演:和田聰宏
公安の人.神永さんの公安時代の同僚.
ザラブに囚われたウルトラマンの居場所を浅見さんに知らせるファインプレーをした.神永さんに調べものをお願いされるあたり,かなり信頼されているようだ.ザラブを出し抜けるくらい優秀だもんな.

政府の男(演:竹野内豊
ゲスト出演?『シン・ゴジラ』の赤坂さんとの関係は「演者が同じ」こと以外不明.
メフィラス星人との式典を取り仕切ったり,ウルトラマンとメンチの切り合いをしたりした.

外星人

異星人とかではなく,外星人と呼称するのちょーくーる.
ザラブ星人(CV:津田健次郎
「CV:津田健次郎」なので,あの顔なのにカッコいい.なんか元ネタと比べてペラペラになった.
元ネタと同じく「にせウルトラマン」に変身(変装?)する.神永の正体がバレたのはこいつのせい.元ネタの「にせウルトラマン」はウルトラマン本人とだいぶ違うデザインだったが,今回ザラブの変身する「にせウルトラマン」はほぼ本人と同じである(本人より目が角ばっているような気もするが,気のせいのような気もする).
地上げ屋のような仕事をしているらしく,「マーカー」の置かれた星の知的生物を次々と絶滅させているらしい.なぜか知らんが,こいつが登場するたびに周りの電気機器が壊れるという迷惑な現象が起こる.
スペシウム光線からの八つ裂き光輪(ウルトラスラッシュ)により死亡.

メフィラス星人(演:山本耕史
主人公より人気が出てしまった節のあるメフィラス星人.元ネタより明らかに狡猾になった.「小学生を誘拐して『地球をあげる』と言うように強要する」というわけわからん計画を立てていたお前はどこへ行ったんだ…….
「(ことわざ・慣用句・名言など),わたしの好きな(苦手な)言葉です」という構文でよくしゃべる人.「地球人類は兵器に転用可能だからわしが管理する」と主張し,人類が超人になるために必要なベーターシステムを与えようとしたお方.地球人視点から見ると完全にできるビジネスマンでしかない.さすがに長期間地球に潜伏していただけのことはあるな.これほど胡散臭い笑顔の似合う外星人も居ないだろう(いい意味で).
正直,今回のメフィラスのやろうとしたことをウルトラマンが止めたことが良かったのかどうかよくわからない.だって,止めたウルトラマン自身も結局,地球人にベーターシステムの基礎理論を与えているしな.
本人は否定しているが,禍威獣が暴れるように仕向けた節のあるお方なので,単なる善人でないことは確か.
ウルトラマンと居酒屋に行くシーンは,ちゃぶ台を挟んでウルトラセブンと対峙したメトロン星人を彷彿とさせる.
直接戦闘ではウルトラマンをギリギリまで追い詰めるが,ウルトラマンの背後に出現したゾーフィに恐れをなして撤退.撤退した割に,最後まで強キャラ感を撒き散らしていた.ネゲントロピーで活動しているそうな.

ゾーフィ(CV:山寺宏一
ウルトラ兄弟の長兄の誤植が元ネタという微妙に出自のわかりにくい方.ゾフィー兄さんに地球の敵に廻ってほしくなかったんだろうなと*8
メフィラス氏に「ここ,わしらの管轄下にするから」と無言の圧力をかけたり,ゼットンを地球に持ち込んだりした.ウルトラマンと同郷らしいが,別に協力はしてくれない.むしろ,ウルトラマンに「諦めろ」って言い続けてた.ゼットン倒した後は助けてくれるけど.
旧作との対応で言うと,ゾフィー兄さんとゼットン星人の役割を兼ねていることにはなる.ウルトラマンの同郷のやつがゼットン持ってくるとはまさか思わんやろ.
なぜかわからんが,画面に映るたびに「異物感」を残す.なんですかね,あの異物感.
「そんなに人間が好きになったのか,ウルトラマン」はこの人のセリフ.なんで命を余分に持ってこなかったんだ.

禍威獣

怪獣ではなく禍威獣.超自然発生巨大不明生物のみなさん.
ゴメス,マンモスフラワー,ペギラ,ラルゲユウス,カイゲル,パゴス
アバンでやられた禍威獣の皆さん.ウルトラQ登場怪獣が元ネタ.そういや「シン・ウルトラQ」はやらないのかな.
ネロンガ
元祖透明になる禍威獣.「電気を食べるってどういうことだよ?!」と数多の科学者を混乱に陥れた怪獣(ほんまかいな).電子を食べているわけでもなさそうなので,「電気を食べるってどういうことだよ?!」.
滝くんに謎の生態を突っ込まれまくっていた.可視光に対する透過率はほぼ100%のくせに,赤外線を体から出しているらしくサーモグラフィーにばっちり写っていた.どういうことなの…….
いきなり地球の外からやってきた銀色の巨人(ウルトラマン)になんかすごいビーム(スペシウム光線)で倒された.

ガボラ
元ネタがすぐ思い出せなかったガボラさんです.ウランを食べます.科学特捜隊がウランをヘリコプターにぶら下げて運ぶという暴挙にでた回出身.
今作のガボラは何とドリル持ちである.単に倒すと周りに放射能が撒き散らされてしまうため,ウルトラマンが肉弾戦の末,どこかへ連れ去っていった.ガボラをパンチで倒した直後に,倒れてくるガボラを避けるウルトラマンがちょっとかわいい.

ゼットン
元祖ウルトラマンを倒した禍威獣.一兆度の火を吐くやばいやつ.光線技は跳ね返す.個体によってはバリアを張る.
今作のゼットンはウルトラやばくて,衛星軌道上に浮いている上にウルトラマンの数十倍の大きさ.ゾーフィの野郎が連れてきた.
ウルトラマンとの初交戦時には,ウルトラマンを圧倒.光線技は効かないし,ウルトラマンの繰り出す攻撃の数倍の量の攻撃をしてくる.つよい.かてない*9
結局,滝を含めた地球の科学者たちの立てた作戦に従い,プランクブレーンに送り込んだは良いが,ウルトラマンプランクブレーンに取り込まれてしまい,相打ちとなった.というか相打ちするしかなかった.無重力弾を作っていれば.

マスコット

KATO太くん
禍特対のマスコット.とてもかわいい.

『シン・ウルトラマン』を観た感想

『シン・ウルトラマン』を観た感想について述べる.わたしはとても好きになった.

ウルトラマンのやらかしが良い

今回のウルトラマンは彼本人のやらかしで,神永の命を奪い,さらには地球人類を危険に晒している.元々,ウルトラマンの本質は「完全無欠の正義の味方」というよりは「頑張って正義の味方になろうとしている真面目で生き方が不器用なヤ○ザ」という認識なので,「ウルトラマンらしいなあ」という気持ち.
結果的にウルトラマンがベーターシステムの基本理論を人類に提供しているのも相まって,「やっぱりメフィラスのやろうとしたこと間違ってなくね?」という気持ちにさせられるのもとても良い.いや,ブラックボックスを渡されるより中身を教えてくれたウルトラマンの方が良心的と思うが.

登場禍威獣のチョイスが良い

今回の登場禍威獣のチョイスには正直驚いた.最初にウルトラマンと闘った「ベムラー」や有名な宇宙人である「バルタン星人」は選ばれるものだと想像していたからだ.パンフレットなどによると,全員の意見を踏まえた上で,庵野秀明氏がチョイスしたらしい.ガボラ以外は印象深い怪獣・宇宙人たちなので,とてもおもしろかった.

ウルトラマンたちの動きが良い

ウルトラマンの動きがすごかった.今回のウルトラマンの動きはすべてCGによるものだが,きぐるみ時代よりも「超人感」が出ていたように思う.というのは,人間独特の体軸のブレなどが少なくなっていたからだ.かといって,完全に人間体らしくない動きをしているわけでもない.その絶妙なバランスが,ウルトラマンの超人感を出しているように思う.初代ウルトラマンより強そう.

『シン・ウルトラマン』に対して個人的に思うところ

『シン・ウルトラマン』は非常に気に入った作品である.だが,少し思うところがあるので,そのことについて述べる.

なぜ禍特対はベーターボックス奪取を手伝ったのか

尺が足りなかったせいか「ベーターボックス奪取」という犯罪の協力者になれるほどの交流がウルトラマンに憑依された神永と禍特対の面々にあると思えなかった.
劇中の描写として,ウルトラマンに「ベーターボックス奪取」を提案されてすぐに禍特対の面々が協力する決定を下したように見える.画面外での交流があったのかもしれないが,一匹の禍威獣と一体の外星人の退治だけではどうにも交流が不足しているように感じてしまう.ウルトラマンが正体をバレた状態で後もう一体くらい禍威獣を協力して倒していたら違和感が減ったかもしれない.

ゼットンの倒し方

完全に個人の好みレベルの話しかないのだが,ゼットンの倒し方がウルトラマンの自己犠牲前提だったことが非常に残念である.この話のテーマが「ウルトラマンが自己犠牲を学ぶ」だからこそなのだろうが,どうしても「ウルトラマンを犠牲にすることを前提とした作戦」を実行するというのがどうにも違和感がある.実際,田村班長も「君を犠牲にはできない」と言うしね.
劇中の描写として「理論を完成させることまでは人類にできたが,実行に移すまでの時間がなかったのでウルトラマンが行った」ということなのだろうが,もう少しやりようが合ったのではないだろうか.
ゼットン無重力弾によって倒された」ことへのオマージュとして,「人類がゼットンを倒すための兵器“無重量弾”を開発するが,いざそれをゼットンにぶつけようとしたら,予想外の出来事がおこってしまい,失敗しかける.それをウルトラマンが自己犠牲によって修正し,ゼットンは倒されるが,ウルトラマンプランクブレーンを漂うことになる」という展開にもできたのではないだろうか*10.尺の問題なのかな.
そんなわけで,「ゼットンの倒し方がウルトラマンの完全な自己犠牲による」という部分に違和感を感じている.

もっといろんな話が見たい

『シン・ウルトラマン』は連作短編をつなぎ合わせたような構成をしている.『ウルトラマン』という作品自体,毎週放送の連作短編だったのだから,そういう構成になってしまうのはやむを得ないと思う.だが,それなら「テレビで連続ドラマとしてやってくれ」とも思ってしまうのである.
特に今回「ウルトラマン」から五回分選ばれて本編のような構成になったわけだが,正直他の回も見てみたい.個人的にはガマクジラジャミラの回を『シン・ウルトラマン』流に再構成したらどうなるのか非常に見たい.予算や人員などの関係で,映画という形になったのだろうが,いつか『連作ドラマ シン・ウルトラマン』を見たいと強く望んでいる.

あ,『シン・ウルトラセブン』もそれはそれとして,待っています.

最後に

まだ書き足りないことがあるような気もするが,一旦ここまでにする.書きたいことがまた出てきたら書くかもしれない.
いずれにせよ,『シン・ウルトラマン』,わたしの好きな映画です.

*1:第35話「怪獣墓場」での出来事.

*2:途中で疲れてテキトーな部分もある.

*3:初代ウルトラマンには大きく分けて A, B, C の三タイプのきぐるみがある.詳しくはググれ.

*4:演者の斉藤工氏はインタビューなどで「フラットな状態」と言っている.

*5:自称というか,ハヤタが名付けたというべきか…….一心同体になった直後なので,その辺曖昧な描写になっている.

*6:映画『スーパーマン』で,スーパーマンがかなり高いところから落ちてくるヒロインをキャッチするシーンがあったけど,アレも普通スーパーマンの手に当たった瞬間,ヒロインが潰れて死ぬのが物理的に正しい描写だと思う…….

*7:射撃の名手アラシ隊員に当たる人物が居ないのは,禍特対は戦闘を担当しないせいだろう.

*8:関係ないけど,エンディングの「M八七」って,ゾフィー兄さんの必殺技「M87光線」と名前に似ている.でも,『シン・ウルトラマン』のエンディングという不思議現象.わざとなんだろうけど,天才の考えることはよくわからぬ.

*9:ただ,この戦いが無謀であることはウルトラマンにもわかっていたようである.滝などを含めた地球人類を奮起させるためにわざと負ける戦いに挑んだ節がある.

*10:シン・ゴジラ』世界と『シン・ウルトラマン』世界が同一だった場合,ゴジラの死体から得た新元素を使った兵器などを出してくれたら面白かったように思う.